五穀豊穣、家内安全を祈願 200年以上続く赤田の大仏祭り

秋田県由利本荘市/賑やかな奉納芸能

神明社から長谷寺に向かう行列の中で、5匹の獅子が舞う平岡獅子踊り。子供の舞い手も見かける=8月25日

「南無十一面観世音菩薩」や「春日大明神」など、のぼり旗がたなびき、地域の伝統芸能が奉納される「赤田(あかた)の大仏祭り」が秋田県由利本荘市で8月24日と25日行われ、大勢の人で賑(にぎ)わった。赤田町内会が主催し、五穀豊穣(ほうじょう)、家内安全を祈願する200年以上続く行事。

赤田の長谷寺(ちょうこくじ)の大仏祭りだが、最大の見所は御神輿(おみこし)の前後を練り歩く百人を超える奉納芸能の集団だ。旗持ちや獅子舞には多くの子供の姿が見え、地域の祭り感が半端ない。

曹洞宗の同寺には、高さ9㍍、木製金箔(きんぱく)押しの十一面観音立像が安置されている。下から見上げると圧倒される迫力。この像は、奈良県桜井市の長谷寺(はせでら)、神奈川県鎌倉市の長谷寺と並ぶ、日本三大長谷(はせ)観音の一つ。鎌倉の本尊と同木から彫り出された胎内仏が納められている。

長谷寺は1792(寛政4)年、赤田出身の是山(ぜさん)和尚によって創立され、亀田藩の祈願所にもなった(寺領50石)。和尚は一帯の山々で修験者のような山岳修行も行い、聖徳太子や空海をほうふつとさせる奇跡や業績があったとされ、地域一帯から慕われている。

お祭りで特に見所なのが25日の御神輿行列。24日は、大仏の分身とされる小さな観音菩薩像を入れた御神輿が長谷寺から神明社に移され一夜を明かす。翌25日の午後1時半、御神輿は約1㌔先の長谷寺をめざし神明社を出発した。

今年の行列は御神輿を前後し、赤田獅子舞、柴野獅子舞保存会、平岡獅子踊り、岩谷町(いわやまち)獅子舞、そして地元の赤田社切(しゃぎり)が気温30度を超える真夏日のなか伝統芸能を披露して進んだ。

かつて和尚は、周辺地域に伝統芸能を教え、特に赤田と柴野には自ら彫刻した獅子頭を伝えたとされる。

「平岡は5匹の獅子が舞う」と、28歳の息子と一緒に獅子舞を演じる54歳の父親。一方、7人が参加した赤田獅子舞は、太鼓と笛、鉦(しょう)が囃子(はやし)をとる。

お寺までは、刈り入れ前の田んぼが広がる。途中、小さな川にかかる赤い欄干の橋がカメラスポットとなった。

何度か獅子舞を舞いながら、一行は階段を上り長谷寺の境内に。大仏を安置しているお堂の周りを3周し、大仏の正面などで獅子舞を披露した。

1歳の息子を連れた20代の母親は「賑やかでうれしい。長く続いてほしい」と話す。

(伊藤志郎)

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