【連載】自民党総裁選 乱戦下の焦点⑥ 早期解散巡り小泉氏と石破氏激論

「勝てる顔か」判断材料に

総裁選候補者演説会は多くの聴衆で埋め尽くされた =19日午後、東京・秋葉原(加藤玲和撮影)

「内閣総理大臣に指名をされた暁(あかつき)にできるだけ早期に解散をするというのは判断材料がないじゃないかというのは全く当たらない」。14日の日本記者クラブ主催討論会で、「せめて与野党の論戦があって、新しい総理大臣はこういう態度で国政運営しようとしているのを分からずして、ただ選挙で選べというのはどうか」と尋ねられた小泉進次郎元環境相はこう述べ、首班指名直後の解散は可能だとの認識を示した。

小泉氏の早期解散を巡る発言は、他候補だけでなく野党からも集中砲火を浴びている。解散権は首相の「伝家の宝刀」(専権事項)ではあるとされるが、憲法の規定では、内閣が政治的責任で決めることだ。ところが小泉氏は、解散は「できる限り早期に」とたびたび述べており、所信表明演説や国会論戦は不要との認識を示している。

自民党は新首相を指名する臨時国会を10月1日に召集する方向で調整している。首相の権利として、首相指名された直後に衆院を解散することは可能だが、現実的な選択肢ではない。

党内には、新総裁が誕生した後、「ご祝儀相場」(高支持率)のうちに解散すべきだとの声が上がっている。早くて同9日にも解散し、衆院選を同15日公示、27日投開票の日程で行う案が取り沙汰されている。一方で、「政治とカネ」の問題などについて国会での説明を回避すれば、国民の自民不信がさらに高まるとの懸念もある。

小泉氏を除く8候補は、少なくとも本会議での野党との質疑、または、衆参の予算委員会までは解散しない考えだ。

15日のNHK「日曜討論」で小泉氏は「史上最長の総裁選だ。国民は次の選挙があったらどう判断するかを考えながら見ている」と述べ、史上最も長い総裁選での議論が衆院選での投票の判断材料になるとの考えを示した。

他候補から異論が相次いだ。石破茂元幹事長は「主権者は国民だ。自民党の都合だけで(解散時期を)勝手に決めるなということだろう」と強調。その上で、「国会における議論なくして、これで(解散して)十分だって話になるとは思っていない」と述べた。別の番組でも「有権者に判断材料を提供するのは政治の義務だ。場合によっては党首討論もあるのかもしれない」と述べた。

高市早苗経済安保相は「『この内閣はこういうことをやるんだ』ということを国会の場で明らかにして、質問も受けて、その上で重要な争点があるということになったら信を問う」と語った。

茂木敏充幹事長は、「解散を問う前にある程度結果を出していかないといけない」と主張。小林鷹之前経済安保相と加藤勝信元官房長官は、国会の中で論戦をしながら、国民が判断する材料を提供すべきだとの考えを示した。

国民の人気が高く、党所属国会議員の支持を多く受けている小泉氏が本命視されていることから、ライバル候補は小泉包囲網を作る。日本記者クラブの討論会では8人中3人が小泉氏に質問した。その受け答えの不十分さや不適切さがメディアで取り上げられ始めた。他候補と比べて政治経験が少ない小泉氏が新総裁に選出された場合は、「ボロが出る前に早く解散した方が得策」という考えが一部にある。

23日に代表選を行う最大野党の立憲民主党は、野田佳彦元首相が代表に返り咲く可能性が高い。同党の中でも穏健保守の支持が高い野田氏は、自民にとって強敵になる。自民党関係者は、「安倍晋三元首相と党首討論で激論した経験もあり、次期総裁にとっては一筋縄ではいかない相手。野党相手にしっかり論戦できるかがポイントになる」(自民党関係者)と話す。

(自民党総裁選取材班)

=おわり=

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