総裁選候補による公開討論会や報道によると、争点の一つとして、自民党ガバナンス(統治のプロセス)の問題がある。政治資金不記載問題の党としての説明責任、総裁選の在り方、また党員名簿の管理が挙げられる。
昨年末から浮上している政治資金問題は、派閥の在り方、政治資金パーティーの資金管理という党ガバナンス上の核心に触れた。
国会議員に限っても、池田佳隆衆院議員、谷川弥一衆院議員、大野泰正参院議員(いずれも当時)の3人が政治資金規正法違反で東京地検特捜部から起訴された。党としては党紀委員会に諮(はか)り、安倍派幹部2人に離党勧告を出したのを筆頭に、39人の処分を発表した。
派閥には、政策集団、また当選回数の少ない議員らの訓練の場など、肯定的な意義も広く共有されていた。だが、岸田文雄総裁は、派閥自体の解散を一方的に主導した。従来の慣例を破り、3年前に総裁就任した後も、所属の岸田派を離脱しなかった。ところが自派閥の政治資金問題が報道されるや離脱し、さらに長を離れた立場から岸田派解散を宣言するという自身のご都合主義を展開した。
今回の総裁選では、政治資金不記載問題について、河野太郎デジタル相が不記載額の返納を公約に掲げる一方で、石破茂元幹事長は、党としての責任対応をアピールしている。
自民党政権において事実上の首相を決める総裁選は、公職選挙法の適用外だ。党が定めた「総裁公選規程」に基づいて行われているが、かつて水面下では金銭授受を含め、「何でもあり」と言われてきた。
9人が立候補している総裁選。本選で決着がつかない場合に上位2人で行われる決選投票での票配分は、国会議員各1票対都道府県各1票、すなわち367票対47票だ。16日に行われた党青年局・女性局主催の公開討論では、地方票の比重を増す規程変更の要望が出された。一部の候補らは、規制の少ない党総裁選で「オンライン投票」の先陣を切り、手続き負荷の軽減から今後の実現の可能性を追求していくとした。
政治不信からの党再生のため、一層、党員の意向を反映すべき(平将明広報本部長代理)との意見も根強い。
だが党員名簿は、名前を貸して本人の自覚も希薄なまま、党費を他人が負担する事例も少なくない現状がある。これに関連して、高市早苗経済安保相は「懸念国」介入のリスクを含め、拙速なオンライン投票実施の反対を表明している。
正しい投票と集計に基づく、公正な選挙が行われる態勢の担保が必須である。
政策を戦わせることが主流の総裁選だが、これを機に脆弱(ぜいじゃく)な党ガバナンスを点検し、その向上を目指す機会となることが願われている。
一昨年、党改革実行本部(本部長・茂木敏充幹事長)が、宗教法人世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や関連団体と一切関係を持たないとし、ガバナンスコードを改訂したが、憲法14条の「法の下の平等」、20条の「信教の自由」への抵触が指摘される。
先述の3人を含め、最近5年間で13人もの自民党国会議員が東京地検特捜部から起訴されている。議員らの倫理基準はどうなっているのか。新総裁には、党ガバナンスの改善という厳然とした課題の自覚も求められる。
(自民党総裁選取材班)