【連載】自民党総裁選 乱戦下の焦点③ 少子化対策 議論少なく  

別姓 法案提出か通称拡充か

小泉進次郎元環境相の演説を聞く支援者ら=7日午後、東京都中央区

昨年1年間に生まれた子供の数は約75万人で、8年連続の減少となり過去最少を更新した。1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率も1・20で過去最低、東京では0・99と全国で初めて1を割った。

インターネット上では少子化が改善されない日本の現状について強く警告する声や、少子化を解消するための案が飛び交っているが、自民党総裁選に向けた討論の中で少子化対策が議題に上がることは現状、少ない。

12日の告示後すぐに開かれた所見発表演説会では、1人10分の持ち時間の中で林芳正官房長官と上川陽子外相が少子化問題に言及した。林氏は自身が掲げる「3つの安心」のうち、最初の一つに少子化対策を挙げた。「少子化の淵源には非正規雇用という問題が横たわっている」とした上で、働き方改革に注力する考えを示した。上川氏は少子高齢化・人口減少を日本が直面している難題だとし、団塊ジュニア世代が2040年に65歳になることを念頭に「危機克服のための変革に向け、舵(かじ)を切らねばならない」と強調した。

子供に関する政策に言及した候補もいる。小林鷹之前経済安保相は幼児教育と高等教育の無償化、民間企業の奨学金制度の拡充を訴えた。加藤勝信元官房長官は「ニッポン総活躍プラン」の2番目として、給食費、子供の医療費、出産費用の三つの負担をゼロにすることを挙げた。茂木敏充幹事長は経済政策の一つとして、ふるさと納税型のこども基金の設立、子供政策は増税や社会保険料ではない新たな財源で対応することなどを掲げた。

ほとんどの候補は出馬に当たって発表した政策に少子化対策や子供・子育て施策を含んでいる。27日の投開票までにそれぞれの政策についてアピールできるかが注目される。

一方、盛んに議題に挙げられ、候補によってはっきり立場が分かれているのが、夫婦が同姓が別姓かを選べるようにする「選択的夫婦別姓」制度の導入についてだ。

制度導入に最も強い意欲を示しているのが小泉進次郎元環境相で、総裁に就任して1年以内に選択的夫婦別姓制度を導入する法案を国会に提出すると明言。河野太郎デジタル相も同様に、来年の通常国会で夫婦別姓について議論する意向を示しており、両氏は投票の際には党議拘束を外すとしている。石破茂元幹事長も賛成の立場を示しているが、13日に出演した民放番組では「総裁が賛成だからみんな賛成しろという話にはならない」とし、党内で意見をまとめるべきだと語った。反対の立場を取るのは高市早苗経済安保相、小林氏、加藤氏の3人で、いずれも旧姓を通称として使用できる制度の拡充を推進することで、改姓による不便を解消する方針だ。政府が2022年3月に公表した世論調査で、現行制度を「維持したほうがよい」と答えた人と、制度を維持した上で「旧姓の通称使用についての法制度を設けたほうがよい」と答えた人が合わせて約7割になったことを理由として挙げたほか、生まれてくる子供の姓がどちらになるかなど子供への影響の有無を考慮すべきだと強調する。

上川氏は、個人としては選択的夫婦別姓の導入に賛成する考えを明かしているが、「社会が分断されてしまうような事柄をそのまま決定してしまうのは、日本の国力をそぐことにつながりかねない」と法制化に慎重な姿勢を示す。林、茂木両氏も国民の間で意見が分かれているとして深く言及していない。

 (自民党総裁選取材班)

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