【連載】脅かされる信教の自由㉘ 第4部 一線を越えたマスコミ 表現の自由侵す〝生ツッコミ〟

報道の常軌逸する「ミヤネ屋」

A 「犯人とされる容疑者が、当法人・家庭連合への恨みを動機として行動に出たという報道に触れ、私どももとても心重く受け止めております。社会の皆さまにもさまざまにお騒がせしていることに深くおわび申し上げます」

B 「謝っているポイント違いますね。あくまでひとごとです」

この〝やりとり〟は2022年8月10日、タレントの宮根誠司氏が司会を務める日本テレビ系列の読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」が中継した世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の田中富広会長による日本外国特派員協会での記者会見の冒頭部分だ。

2022年9月22日にテレビ放送された「情報ライブミヤネ屋」

Aは田中氏、Bは家庭連合情報に詳しいとされるジャーナリスト鈴木エイト氏だが、2人が実際に会見会場でこんな〝やりとり〟をしているのではない。田中氏が会見文を読み上げる画面上に鈴木氏の画面枠を重ね、田中氏の発言が英語に逐語通訳される間に、番組が鈴木氏にリアルタイムで〝生ツッコミ〟を入れさせたものだ。「ミヤネ屋」はこれを「紀藤(正樹)弁護士×鈴木エイト氏 生解説」とのテロップを入れた。

当時、安倍晋三元首相銃撃犯の動機とされた「旧統一教会への恨み」と関連し、教団トップの記者会見には関心が高まっていたが、テレビ業界には教団側の主張をそのまま生中継することへの懸念もあったようだ。ありていに言えば、「視聴者に誤った情報を送りかねない」(東スポWEB、22年8月11日掲載)ということだ。

教団側の主張も正しく伝え、それについて反論等があればそれも平等に伝えるというのが報道の大原則のはずだが、「ミヤネ屋」がとったのは、上記のような手法で、これは、それ以降の教団側の記者会見の中継放送に受け継がれ、エスカレートした。

同年9月22日に放送された家庭連合教会改革推進本部の勅使河原(てしがわら)秀行本部長と顧問弁護士の福本修也氏の会見では、画面両サイド下に2人の「生解説」者(同日は教団批判のジャーナリスト有田芳生(よしふ)氏と鈴木エイト氏)の画面を重ね、各氏が「異議あり!」と書かれた横長の札を出すと、画面に「異議あり!」の赤札が登場し、その後で、各氏の主張が短い文章で示された。

この「ミヤネ屋」の手法は報道の常軌を逸したものだ。テレビ画面は、完全に不公平な空間になってしまった。教団側には反論する機会を与えず、次から次へと移動するあらゆるテーマにおいて、批判する側の主張だけが最後に放映され、教団側がでたらめな主張をしているようなイメージしか作り出されない。教団側には説明や意見を表明する権利はないと言わんばかりの番組作りで、公平性を欠くばかりでなく、教団側の表現の自由を著しく侵害するものと言わざるを得ない。

例えば、田中氏の会見で、「上記コンプライアンスの徹底により、霊感商法と称される類いのものは当法人の信徒において行われていませんし、被害報告もありません」と述べると、鈴木氏は「商品を介在させない霊感商法をやっているわけなんです。献金の引き換えに何かを授けるとか、…やり方を変えているんですよ」と語った。しかし、これは田中氏が言っていることとは違う「商品を介在させない霊感商法」なる別の概念を持ち出して論点をずらす、典型的な詭弁(きべん)の手法だ。

この時は、鈴木氏が「この壺(つぼ)を何百万という売り方ではないんです」と語り、コメンテーターのパトリック・ハーラン(パックン)氏から「じゃあ今、(霊感商法を)行っていないのは間違いない」と突っ込まれ、「そうですね。商品を介在はさせてはいません、基本的に」と答えざるを得なくなった。

いずれの記者会見中継も宮根氏が教団批判の専門家たちに一方的に見解を述べさせる形で放送を終了しており、一線を越えた偏向報道と言わざるを得ない。

(信教の自由取材班)

=第4部終わり=

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