高さ20㍍の深紅の枠旗がはためく
能登半島・七尾市中島町
国指定重要無形民俗文化財で、能登半島の秋を代表する「お熊甲(くまかぶと)祭」が、21日、七尾市中島町で盛大に繰り広げられる。同町に鎮座する久麻加(くまか)夫都阿良加志比古(ぶとあらかしひこ)神社の祭礼で、渡来文化の影響を色濃く伝える祭りとして今に伝わっている。毎年9月20日に行われているが、今年は能登半島地震の影響などで、21日に開催される。
同神社を総社とあおぐ近郷22地区の末社から、みこしとラシャ地に深紅の高さ20㍍の枠旗(わくばた)が、40人余りの屈強な男衆に担がれて、次々と境内に入る。午前10時半ごろ、勢ぞろいすると、林立する様は壮観そのもの。「ワッショ、ワッショ」と威勢の良い掛け声とともに、拝殿目がけて駆け込む「差し上げ」が繰り返されるたびに、見物客から盛大な拍手が湧き起こる。
同祭は長い社名が示す通り、古代朝鮮との関わりが指摘されている。かつて韓国の祭りを視察した同町の文化財保護委員の橋本佐輔さん(故人)は、「全く同じ祭りは見なかったが、祭りの先導役を務める猿田彦の鳥甲が赤や緑、黒など鮮やかな原色が使われ、韓国の仏閣に似た色合いで、改めて異国情緒を感じます」と説明していた。同神社周辺は、かつて熊木郷と呼ばれ、万葉集にも登場し、古い歴史がある。
(日下一彦)