文科省、家庭連合に不当な質問 「無回答」巡る過料裁判で 報告済み「海外送金」など

文部科学省文化庁が、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に対して行った宗教法人法「報告及び質問」に基づいた質問に一部回答がなかったとして行政罰の過料を求めた裁判で、家庭連合側の無回答を裁判所が問題にしない不当な質問項目が10項目ほどあることが分かった。(信教の自由取材班)

文科省が過料10万円の支払いを求めた裁判では3月に東京地裁、先月27日に東京高裁が支払いを命じる決定をしたが、家庭連合は2日に特別抗告を最高裁に申し立てた。

宗教法人の解散事由、特に「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」を理由とする解散命令の疑いがある時に、質問権行使が宗教法人法で定められている。「法令に違反」の同法解釈として、「刑法等の実体法規の定める禁止規範又は命令規範に違反した行為」というオウム事件の1995年判決以来の判例が、その法解釈の根拠となってきた。政府も2022年10月14日には、この判例を踏まえて、家庭連合が解散命令請求の対象外であることを答弁した。

家庭連合側は、「政府の不当な解釈変更に基づく質問権行使、解散命令請求に対して、過料を争う地裁、高裁で、宗教法人の死刑にも匹敵する行政処分である解散事由に、法令違反として、民法709条による不法行為が適用されることは憲法31条違反(罪刑法定義違反)だ」と強く主張している。

家庭連合に対する文科省の質問権行使は、一昨年11月22日から昨年8月22日にかけて7回にわたり、約500の質問に対し教団側が約100の質問に回答しなかったとして文科省は同9月7日に東京地裁に過料通知した。教団側の不服申し立てに東京地裁、高裁とも支払いを命じる決定をした。その際、裁判所は無回答(不報告)だった質問を45項目に分類し、各項目ごとに処罰か否かの結論を示している。

本紙が教団関係者に取材したところによれば、45項目のうち処罰にはならない「不報告と認められない」「処罰しない」などの結論が10項目、「処罰の対象として取り上げない」が2項目あった。これに対し「処罰する」が32項目、「一部を処罰せず一部を処罰する」が1項目だった。

不報告に対し裁判所が「処罰しない」とした文科省の質問項目の例として、「海外送金について、外国為替および外国貿易法第55条に基づく報告内容が分かる資料を添付の上、報告されたい」と求めたものがある。教団関係者は「(家庭連合は)外為法その他の法令に基づいて、関係省庁に海外送金の報告を適正に行っており、この場合の関係省庁は財務省だが、政府内で調べれば分かる質問をしている」と述べる。裁判所も教団が関係省庁に適正に報告していると認めた形だ。

しかし、税務署や社会保険庁など政府内で調べれば分かるはずの全従業員の給与、退職金、源泉徴収、年末調整の計算など細かく報告を求める項目について「不報告であり、処罰する」とされた。また、教団関係者は「全国約300ある教会の会計の領収書、請求書のすべての写しとともに平成18年(06年)以降の総勘定元帳などを出せと言ってきたが、一つの教会で段ボール何箱にもなるのに300の教会でやるなど期限内にとうてい対応できなかった」と状況を語った。これに対しても、裁判所は「短期間で対応することは、著しく困難だった」「処罰の対象としない」と認めた。文化庁の質問権の行使が極めて強引だったと事実上認めたと言える。

個人情報要求、過大な内容 質問権行使 教団職員「夜も眠れず」

濫用の疑い 検証が必要

プライバシーを巡る問題で回答しなかった項目にはさまざまな契約案件もあったという。「契約書には相手の氏名、住所が必ず載る。信者だけでなく信者以外の人の個人情報だけに配慮するのは当然だ」(教団関係者)。さらに他の不回答の質問も、「既に説明を尽くしたにもかかわらず、理解しようとせずに、不報告とされた」「解散事由とされている不法行為とは何の関係もないので提出しなかった」というのが教団関係者の説明だ。

文科省文化庁宗務課は8人だった職員を約40人に増強して質問権を7回行使、回答期限は概(おおむ)ね1カ月だった。教団側のスタッフは10人足らずで夜も眠れないほどの作業量だったという。

宗教法人法は質問について「権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」と定めている。質問は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」や「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」の「疑い」があることに行うものだ。文科省文化庁が決めた質問権行使の基準では、▽「疑い」の有無を判断する際は、風評や一方の当事者の言い分のみで行わない▽公的機関において当該の宗教法人に所属する役員等による法令違反や法人の法的責任を認める判断があるなど客観的な資料や根拠に基づくのが妥当――などと規定されている。

しかし、質問権行使の第1回の22年12月9日の時点で文化庁の担当者が元信者らに対して、「裁判所でひっくり返されないように証拠を固める」と発言したと報道されているように非公開の場で行われた質問権行使は、行政に求められる公平・公正の原則を逸脱して、「解散命令請求ありき」で進められていた。裁判所もその回答には過重な負担があると認めるほどの不当な質問を含んでおり、これを大きな行政権で民間の宗教法人に執拗(しつよう)に行った実態は、戦後宗教行政史上において極めて大きな問題を残しかねないと言える。

無回答が増えた背景には、期限までに回答できないほどの過大な質問内容や、従業員の源泉徴収、年末調整など、解散理由とされた「不法行為の組織性、悪質性、継続性」と関係がない報告徴収・質問など、文化庁が定めた質問権行使基準に合致しないと教団側が考える質問が多かった実情が浮かび上がる。非公開で行われてきた家庭連合への質問権行使、解散命令請求が適正な基準で進められたか、行政権の濫用(らんよう)はなかったか、全ての情報を公開し厳正に検証すべきだ。

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