亜寒帯性植物が群生
猪苗代湖の西側にある赤井谷地は国指定天然記念物になっている。が、訪れる人はほとんどいない。谷地とは湿地という意味で、関東地方や東北地方で多くみられる地名。
ここに行くには国道49号ではなく、戊辰戦争の時の白虎隊奮戦地であった戸ノ口原古戦場跡から、車がやっと通れるような滝沢街道をたどる必要がある。
森におおわれた寂しい道で、ところどころ会津藩兵士の墓碑があり、当時の悲しい出来事をそのままとどめている。
見逃してしまいそうだが、この道から赤井谷地に入る小道がある。藪(やぶ)を越えて行くと広場に出て、谷地全体を遠望することができる。
植物学者だった昭和天皇は2度もやってきて、昭和36年に訪れた時に「雨はれし水苔原に枯れ残るほろむいいちご見たるよろこび」と御製(ぎょせい)(和歌)を詠まれた。
暖帯の地なのだが、ホロムイイチゴは亜寒帯性植物で、バラ科キイチゴ属の植物。花は白く実が食用になる。広場にはこの御製を刻んだ石碑がある。その他ミズバショウ、エゾリンドウなど亜寒帯性植物が群生している。
8月に開花するのはクロモ、ミカヅキグサ、ミズギボウシ、カキラン、シカクイ、サギソウ、オモダカ、トダシバなど。
(文・写真 増子耕一)