甲子園、花火大会、蚊の北上、夏野菜… 夏の風物詩 猛暑どう影響

ヒカリエ8階ギャラリーで開催中の「夏の 風物止展」=14日、東京・渋谷

今夏も全国的に最高気温が35度以上の猛暑日が続き、夏の甲子園や花火大会、野外フェスなどの「夏の風物詩」が影響を受けている。世界自然保護基金(WWF)ジャパンは18日まで東京・渋谷のヒカリエで企画展「夏の風物“止”展」を開催。気候変動が風物詩に与える影響に着目し、地球温暖化や再生エネルギーについて考えるきっかけを与えてくれる。(豊田 剛)

「夏の風物詩」の代表格は、青空の下行われる野外フェスだ。国民的バンドのサザンオールスターズは、暑さを理由に夏の音楽フェス「勇退」を宣言した。また、ゲリラ豪雨の影響で、足立区の花火大会(7月20日)が開始直前に中止された。福島県相馬地方の夏の伝統行事、「相馬野馬追」は厳しい暑さによる人や馬への負担を減らすため、今年から2カ月前倒しの5月開催になった。

現在開催中の夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)も酷暑の影響を受けている。昨年から熱中症対策として、選手が五回終了後にベンチ裏の涼しい場所で休息する「クーリングタイム」が導入され、今年は大会3日目まで、昼間の試合を避ける「2部制」が導入された。それでも、試合中に足がつったり、熱中症にかかったりする選手が続出し、試合進行に影響が出ている。

WWFジャパンの気候・エネルギーグループの吉川景喬氏は、「2010年以降、熱中症患者は大きく増加し、昨年は全国で約9万人の方が搬送された」とし、このままでは「夏の高校野球のあり方も大きく姿を変えるかもしれない」と警鐘を鳴らした。

ビアガーデンでは、蚊の影響で楽しめなくなる可能性も懸念される。「デング熱を媒介するヒトスジシマカ(ヤブ蚊)が青森県まで生息域を北上させているだけでなく、外来種による感染拡大の恐れもある」と吉川氏は話した。

温暖化の影響は食卓にも及ぶ。高温や集中豪雨などの影響でトマトやキュウリなどの夏野菜やブドウや桃といった果物の生育障害が報告されている。吉川氏は、このままでは「生産量が減って価格が押し上げられ、身近な存在だった野菜や果物に手が届かなくなってしまう」と懸念を示した。

地球温暖化の最大の原因とされる温室効果ガスをどう減らすかが地球規模の課題だ。温室効果ガスをほとんど排出しない再生可能エネルギーの普及を促進するWWFジャパンは、50年までに自然エネルギー100%を実現するシナリオを提言している。

ただ、太陽光発電を巡っては、無秩序なソーラーパネル設置による景観や環境の破壊が各地で報告されている。こうした中、ペロブスカイトと呼ばれるフィルム型太陽電池も開発されている。ガラス建材と一体化させたもので、26年の実用化に向け、今月から千葉県匝瑳(そうさ)市で実証実験が始まっている。

WWFジャパンのブランドコミュニケーション室長の渡辺友則氏は、「太陽光発電を二項対立で考えるのではなく、しっかり制度化した上で、どう最大限活用していくか考えていくことが大切」と話した。

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