
安倍晋三元首相暗殺事件を巡る報道は、山上徹也被告が世界平和統一家庭連合(家庭連合=旧統一教会)信者である母親の高額献金に対する恨みを供述したという警察情報が事件直後に流れ一大センセーションとなった。凶悪な事件そのものが小さく見えるほど毎日のように家庭連合批判が繰り返された。
その中で信者が差別、暴力暴言、器物損壊などさまざまな被害を受けるようになった。今年、家庭連合は宗教法人登録から60年経(た)つが、国際弁護士の中山達樹氏は「この間、家庭連合が犯罪に関係したことはない」とフランスで6月に開催された国際シンポジウムで強調している。
だが、岸田政権は閣議を経ず一夜のうちに宗教法人法の解釈変更を行い、質問権行使の要件に「民法の不法行為」を含むことにし、裁判所に家庭連合に対し宗教法人法の解散命令請求をした。このため信者の多くは、差別や被害がさらに増えることを懸念している。
日常の買い物に支障を来す問題もある。昨年11月7日に記者会見した田中富広会長は、「不動産契約を断られた」「花や仕出し弁当の購入を断られた」「有名自動車メーカーが車の販売を禁止し、車が買えなくなった」などの事例を挙げた。
その一つは、愛知県内にある日産系列の中古車販売店で3月、同県の家庭連合職員が法人名義で車を買おうとして拒否されたケースだ。職員が法人名義での購入の意向を伝えたその場では問題にならなかったが、後日、契約書(法人名義)に捺印までしていたにもかかわらず、販売店の担当者から「販売できない」と連絡があった。
担当者に電話確認したところ、「世間を賑(にぎ)わしている団体」であり、「文科省から解散命令を請求されている」ため、「社会通念上というか、会社としても適切ではない」ことが理由だという。
東京都内ではトヨタ系列の中古車販売店でも車両購入の契約の際、入金も済ませ、納車日も決まった状況で契約を反故(ほご)にされた。昨年9月、教会職員が同店を訪れ、見積作成を依頼し、法人で購入する意向も伝えていた。書類のやりとりなどをしながら引き渡しの日時を定めたが、同年10月10日に販売店から連絡があり、車両販売の契約を白紙にしたいと伝えられた。断った理由はやはり、「世論を鑑みた判断」だったという。
担当の教会職員は、「こちらにとっては明らかに差別だと感じる。お金も払い、納車日も決定した上での一方的な破棄で、とても落ち込んだ」と語った。
家庭連合側は不当な差別と偏見による対応だとして、弁護士を通し、販売拒否対応の取り下げを求める抗議文を両社に送っている。
不動産契約も困難なケースがある。茨城県に住む20代の津田義博さん(仮名)は、同県内にある家庭連合の教会職員だ。津田さんは昨年、親の引っ越しのために自身の名義で物件を借りようとした際、保証会社から拒否された。
津田さんは、「高齢の両親が仕事をやめることになった関係で、当時住んでいた家から引っ越すことになった。両親は埼玉に住んでおり、姉夫婦も埼玉にいたために埼玉県内で物件を探していた」と振り返る。
昨年9月、物件が見つかり不動産会社とも相談の上で、両親の代わりに津田さんが自身の名前や職業、収入などを契約書に記入した。「不動産会社側は収入面しか見ていなかったので、多分大丈夫だろうと思ったようだが、その後、審査で止められたという連絡があった」。詳しい理由は教えてもらえなかった。自分の信仰する宗教のため契約が不利になったのではないかと、津田さんの胸中には釈然としない思いが残った。
(信教の自由取材班)





