トップ国内【連載】脅かされる信教の自由⑳ 第3部 信者への差別・人権侵害 偏向報道に傷つき自殺

【連載】脅かされる信教の自由⑳ 第3部 信者への差別・人権侵害 偏向報道に傷つき自殺

亡 く な っ た 娘 の ス マ ー ト フ ォ ン を 持 つ 大 川 さ ん ( 仮 名 ) = 6 月 22 日 、 埼 玉 県 ( 石 井 孝 秀 撮 影 )

「信者の人権を守る2世の会」代表の小嶌希晶さん(28)によると、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)へのマスコミ報道が過熱して以降、2世の自殺が数件起きている。小嶌さんは「多くの2世たちが自分も知らず知らずのうちに傷ついている」と指摘する。

埼玉県在住の家庭連合信者、60代女性の大川さよ子さん(仮名)は一昨年、長女のめぐみさん(仮名、当時27)を自殺で亡くした。遺書は残されていなかったが、教団への過熱報道が原因だと大川さんは指摘する。「教会への批判が、親への悪口に聞こえてストレスだったのだろう。優しい性格で、傷つきやすい子だった」

大川さんは信者としての活動、体を悪くした両親の介護、親から受け継いだ書籍や文房具などの小売業の仕事など、忙しさから家族との細やかな時間を持つことが難しかったことを悔やむ。

中学生の時、めぐみさんはいじめなどが原因で、不登校を繰り返すようになり、心療内科を受診したところ、統合失調症と診断された。高卒資格を取得後、工場勤務や派遣社員など幾つかの職場で働いた。しかし、人間関係や仕事上のトラブルに直面し、2022年3月、障害者の枠で雇用されていた仕事を辞め、それ以降自宅に引きこもってしまった。

しかし、母親との仲は良好で、家族の中では「一番何でも話せる関係性」(さよ子さん)だった。しばしば一緒にカラオケへ行くこともあった。めぐみさんは教会員ではなかったが、誘えば教会のイベントやセミナーなどに参加しており、韓国の教団関連施設にも訪れていた。

だが、安倍元首相の銃撃事件後、様子が一変。テレビやネット上に教団の批判報道が増えだした頃、めぐみさんとの関係がぎくしゃくし始める。

知り合いの信者と家の近くで話していた時、突然めぐみさんが「ドン!」と、大きな音を立ててドアを閉めたことがあった。そういった不機嫌な態度は今まで一度もなかったので、大川さんは驚いたという。また、怒ったような口調で「借金はいくらあるの?」と聞かれたこともあった。バッシング報道に登場していた元信者などの話に引きずられての言動だったのではないかと、大川さんは推測している。

ある時、めぐみさんが夜遅くなっても帰宅せず、朝になっても帰ってこなかった。大川さんがめぐみさんの友人を訪ね回ってみると、友人の一人から、めぐみさんから送られてきたというSNSのメッセージを見せてもらった。そこには「なんかもう疲れた」と自殺をほのめかす言葉が並んでいた。

午前中ずっと探したものの娘の消息は分からず、捜索願を出そうと思っていた矢先、遺体が見つかったとの知らせを仕事先で受けた。大川さんは「一緒に住んでいたのに、傷ついていたことを把握できなかった。それが不甲斐(ふがい)なくて悔やまれる」とうつむく。

めぐみさんからのメッセージには、自殺をほのめかす内容のほか、母親が自分を「金づる」にしようとしているという、一方的な思い込みも記されていた。

大川さんによると、まだめぐみさんが仕事をしていた頃、銀行に行く時間と手間を省くため、一時的に数千円のお金を借りたことが何度かあった。仕事を辞めた時には再就職を勧めたこともあったが、これらの出来事を曲解した可能性があるという。「偏向報道によって娘との絆も信頼も失われてしまった」と大川さんは悔しさを滲(にじ)ませる。

最近は地元の教会とは、人間関係などの理由でやや距離を置いている大川さんだが、政府の出した解散命令請求には、「不当だ」と憤りを隠さない。解散命令が確定すれば、めぐみさんのように苦しんだりする人がさらに出てくるのではと危惧している。

(信教の自由取材班)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »