1992年、国際合同結婚式や「霊感商法」がテレビのワイドショーに大きく取り上げられ、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への批判報道は繰り返されてきた。そのため、信者がその信仰を理由に差別や偏見、時には〝敵意〟にさらされ悩み苦しむという事態も起きていた。
安倍晋三元首相の暗殺事件前のことだが、現在首都圏で接客業をしている30代女性の島田絵理さん(仮名)は、以前勤めていた店の男性店長から嫌がらせを受けた経験がある。もともと店長から、過度な接触といった行為を受けており、不快に感じていた島田さんは、日記帳にそのことへの不満を書き連ねていた。
ある日、たまたま仕事場に日記帳を置き忘れ、中身を店長に見られてしまった。日記帳を読まれたことで家庭連合の信者であることも知られた。その後、店長からSNSを通じ、「やる気を感じない」「勤務態度が悪い」など、それまでなかった指摘や注意をされ、信仰を理由にした嫌がらせまで受けるようになる。
「知り合いの女性客から、店長が私のことを『統一教会の子だから、連絡取るのとかやめた方がいいよ』と伝えていたらしいと直接聞かされた。ほかにも何人か共通の知り合いにそう言っていたらしい」
結局、島田さんはこの店を辞めることになるが、家庭連合への信仰を理由とした嫌がらせについて、「正直な話、表に出てないようなケースは結構あると思う。信者はどこか、忍耐することを良しとするところがありますから」と懸念を示す。
安倍元首相暗殺事件後のマスコミの家庭連合批判の過熱の中で、信仰を理由に自家用車へ落書きをされた人もいる。昨年10月、中部地方に住む60代女性信者・上村ちひろさん(仮名)の自宅に置かれていた車のボンネットに誹謗(ひぼう)中傷の言葉が書きなぐられていた。
油性マジックで書かれていたため、落書きは「簡単には消せなかった」という。警察にも通報し、自宅周辺のパトロールも行われたが、犯人は見つかっていない。
女性は「信仰は間違いなく心のよりどころ。このように落書きをされて大きく傷ついた」と話す。
自宅のガラスを破壊されたというケースもある。2022年8月12日の深夜0時半ごろ、福島県内に住む佐々木京子さん(仮名)の自宅玄関横の窓ガラスに何かがぶつかったような大きな音がした。恐怖を覚えた佐々木さんだが、その晩はそのまま就寝。翌朝確認すると、簡単には割れないはずの複層ガラスの窓に、直径1㌢㍍程度の穴が開いていた。
ゴムパチンコのようなものを使ったものと推測され、後日警察に被害届を出したが、何者によるものかいまだに分からないという。
佐々木さん夫婦が家庭連合の信仰を持っていることを知る隣人は多かったが、そのことを今まで表立って悪く言われたことはなかった。
その後、自宅駐車場のスイッチ式の電灯が知らない間についていたり、農機具用のオイルの空き缶が敷地内に捨てられたりと、嫌がらせのような出来事が続いている。
「また同じような事件が起こるのではないかという恐怖から、夜も眠れない」という佐々木さん。最悪の場合、暴漢が自宅に乗り込んでくるのではないかという不安に今も苛(さいな)まれている。(信教の自由取材班)