ジョブズを魅了した風景画 木版画家、川瀬巴水展/山形美術館

「旅情詩人」と呼ばれ、日本全国の風景を描いた木版画家、川瀬巴水(はすい)の作品を集めた企画展が山形県の山形美術館で開かれている。

巴水は大正から昭和にかけて活躍した近代風景版画の第一人者で、日本の原風景を求めて全国を旅し、四季折々の風景を描いた。「旅と郷愁の風景」と題した本展では、初期から晩年までの代表的な作品約180点を紹介している。

当会場限定展示の作品「山形山寺」(1941年)は、松尾芭蕉が「おくのほそ道」で訪れた古刹(こさつ)を描いた作品。夜空に煌々(こうこう)と輝く月を配し、静寂に満ちた情景として表現している。

巴水作品で多く登場するのが、夕闇をモチーフとした風景。薄暮の空のグラデーションや川面に反射する家々の明かり、月の光までも繊細に木版画で表現している。

アップルコンピューターの創業者スティーブ・ジョブズは巴水の版画に魅せられた1人で、東京の画廊で25点の巴水作品を購入している。地味で寂しげな風景を描いた作品が多かったそうだ。シンプルでかつ斬新なものを生み出そうとした巴水の感性がジョブズの心を引きつけたのかもしれない。晩年ジョブズは自分の部屋に夕景を描いた巴水の作品を飾っていたという。会期は8月25日(日)まで。入場料は一般1400円、高大生800円、小中生500円。

(長野康彦)

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