現代アートを牽引する存在 馬場彬―まつろわぬ画家―展 60点を展示

秋田県角館町の平福記念美術館

未発表作を含む約60点を展観する「馬場彬ーまつろわぬ画家ー展」=秋田県仙北市立角館町平福記念美術館

わが国現代アートの先駆者の一人、馬場彬(あきら)の作品展が秋田県仙北市角館町の平福(ひらふく)記念美術館で開かれている。角館町は新潮社創業者・佐藤義亮(よしすけ)の出生地で、縁あって未発表作を含む多数の馬場作品が2023年春に同美術館に寄贈された。その中から「まつろわぬ画家」の副題で約60点を展観している。

「まつろわない」とは、従わない、反発する―などの意味。

濃淡の灰色味――グレーを基調とした作風だが、青、赤、黄色など多様な色彩と、人物にも似た有機的な形、そしてネジや点も散見される独創的な画風で印象深い。パッと見ただけでは何を表現したいのか捉えにくいが、作品の前から離れがたい魅力がある。

馬場彬は1932年東京生まれ。東京藝大を出て55年からサトウ画廊のキュレーターとして河原温やリ・ウーファンなど新進気鋭の若手作家を数多く発掘・紹介し、戦後の現代美術を牽引(けんいん)する存在となった。「サトウ画報」を定期発行しつつ、自身も油彩、コラージュ、版画、オブジェの制作と挑戦を続けた。

病を得て89年に妻の故郷である秋田市へ転居。2000年に67歳で没するまで10年間にわたり制作したが、今回の展示ではこの晩年の作品が4割を占めることから注目を集めている。

89年から90年まで文芸誌「新潮」の表紙にコラージュ作品を掲載したが、会場では雑誌の一部を展示。

会場は大きく三つに分かれ、入り口の「ふれあいサロン」は「無題」とされる油彩が12点。次の「ふれあいギャラリー」では紙・版画、油彩、コラージュの額装(50㌢前後)が30点弱で、スケッチブックやクリアファイル、段ボールを切り貼りし、繭玉や、中にはビスを10個ほども並べた作品もあって、小中高生の夏休み自由研究のヒントになりそうだ。

最後の企画展示室には、長辺約1・6㍍を中心に最大で2・5㍍を超す油彩20点弱を展観。人気のある「ゲートのコンポジション」では、記者の目には黒色の線群が群衆に、背景が墨絵のようにも見える。

同館では「67歳で没するまで制作し続けた現代を代表する抽象作家です。不思議な気持ちを経験していただければ……」と話している。同展は9月23日まで。月曜日が原則休館だが祝日は開館。電話0187(54)3888。

(伊藤志郎)

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