
神奈川県箱根町にある強羅(ごうら)公園は、早雲山の麓の広大な斜面を生かしてつくられたフランス式庭園。左右対称の庭園で、中央に噴水池があり、あずまや風の音楽堂もある。茶廊やクラフトハウスも洋風で、モダンで洗練された公園だ。
この中に「白雲洞茶苑(はくうんどうちゃえん)」がある。日本経済発展の推進者として有名だった益田孝(鈍翁)によって1910年代に建設され、22年原富太郎(三渓)に、40年松永安左ヱ門(耳庵)に継承された。3人は新しい茶の世界を打ち立てて、近代数寄の「三茶人」と呼ばれた。
入り口を入ると山中の趣のある日本庭園で、石段の小道を登っていくと「白鹿湯(はくろくとう)」の脇を通って、「寄付」にたどり着き、「白雲洞」に至る。「白鹿湯」の中は岩風呂だそうで、「寄付」とは石炉のある四畳半の茶席。
「白雲洞」は農家の古材を用いて造られた「田舎家の席」だそうだ。八畳敷の茶室で囲炉裏(いろり)がある。当時流行した自由な形式の茶席。
その奥の左に「不染庵(ふせんあん)」、右に「対字斎(ついじさい)」があり、茶席博物館のごとし。周囲の庭園には野点(のだて)席や茶花園もあって、公園の中の独立した空間となっている。
(増子耕一)