
天宙平和連合(UPF)の付属組織「富山県平和大使協議会」は、若者がサイクリングで世界平和を祈念する「ピースロード」、識者から歴史、文化、教育などを学ぶ「富山オープンカレッジ」など複数の行事を富山市、同市教育委員会の後援を得て行ってきた。
ところが、2022年7月8日に安倍晋三元首相暗殺事件が発生。富山県・市でもマスコミが、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)・関連団体と行政当局者や議員との関係を蜂の巣をつついたように追及した。関連団体、UPFも標的になった。
「市長には何度かお会いし、県内の議員らとは、講演会などの行事の打ち合わせで年に何十回も会って協力してきた」
昨年6月に一般社団法人富山県平和大使協議会を立ち上げた鴨野守代表理事はこう話しながら、何通もの通知書を広げた。事件から3カ月、22年10月になると各行事の後援を取り消す富山市、市教委の通知、議員からは関連団体の退会や役職辞任の通知が届いた。「この間、一言もこちらの話を聞いてもらえなかった。残念でならない」。鴨野氏は表情を曇らせた。
事件後、地方議会で最初に教団と関係を断つ決議を行ったのは9月28日、大阪府富田林(とんだばやし)市議会と富山市議会だ。富田林は共産党の提案だった一方、富山は保守市政が主導した。
富山市の藤井裕久市長は21年に初当選。自民党公認で県議を4期務め、市長選に際し無所属になり自民、立憲民主、国民民主の各党から推薦を得た。選挙では教団施設も訪れて教団・関連団体から応援を受けていた。
マスコミの追及は、20年富山県知事選挙で教団・関連団体から選挙応援を受けた新田八朗知事とともに執拗(しつよう)に続いた。事件後間もない22年7月21日、藤井氏は記者会見で関係を認め「一回しっかり立ち止まって、自分なりに考えてみたい」と答えた。

8月10日に岸田文雄首相は教団との関係排除を目的に内閣改造を挙行。その1週間後の17日、藤井氏は「一切関わりを持たない」と決意表明した。これを受けた決議を富山市議会は9月28日に採択。決議文には市長と歩調を合わせたことを記している。
「藤井市長並びに当局は、旧統一教会は極めて問題のある団体として、旧統一教会及び関係団体とは一切関わりを持たないことを決意し、表明した。富山市議会も、藤井市長並びに当局と同じく旧統一教会及び関係団体と今後一切の関係を断ち切ることを宣言する」
富山は自民党王国であり岸田政権の上意下達が見て取れよう。
だが、「市長並びに当局」「市議会」つまり公平中立が求められる地方公共団体で、「一切の関係を断ち切る」という重大な決議の際に、少なからぬ市民が所属する教団・団体の人々の言い分を聞かなかった。鴨野氏は、「例えば友人が悪いことをしたと聞いただけで友人関係を断つ人はいない。どうしたのと友人の話を聞いてから判断するものではないか」と憤る。
決議文の文言に深く傷つき、市議から請願も受け付けられなくなった家庭連合の信者が請願権の侵害を理由に富山市を提訴。複数の行事が中止になった富山県平和大使協議会もまた同市を提訴している。
富山市や議員らと協力してきた行事が一方的に悪質な活動と扱われ、主催した団体を反社会的団体呼ばわりされるのは我慢がならないわけだ。
(信教の自由取材班)