トップ国内【連載】脅かされる信教の自由⑪ 第2部 地方議会への波紋 信仰心失う日本に危機感

【連載】脅かされる信教の自由⑪ 第2部 地方議会への波紋 信仰心失う日本に危機感

元熊本市議会議長 主海偉佐雄氏

元熊本市議会議長 主海偉佐雄氏
とのみ・いさお 1935年熊本県阿蘇市生まれ。熊本工業高校卒業後、主海建設入社。熊本市議会議員を7期28年務めた。元熊本市議会議長、元熊本県市議会議長会・会長。全国保護司連盟顧問。

「信教の自由を守るというごく当たり前のことが守られていない。宗教とは何ぞや。人間は自分の力が及ばないことに出会ったときは自然と手を合わせ神頼みをするもの」

世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の信者は6月16日、熊本市で信教の自由をテーマにしたシンポジウムと街頭デモを行った。その主催者あいさつで元熊本市議会議長の主海(とのみ)偉佐雄氏は信仰心を持つことの大切さを説いた。拘置所で犯罪者が罪を償い、改心させるために導く教誨(きょうかい)師(多くの場合、僧侶や牧師)を例に挙げ、「信仰心、何かを導くということは人間にとって非常に大事なこと」と強調した。

安倍晋三元首相の銃撃事件が起き、非難の矛先が家庭連合に向かうと、過去、家庭連合や関連団体の集会、イベントに参加するなど“接点”のある議員らがマスコミの取材の対象になった。「接点のある元議員」として熊本県で最初にマスコミの“標的”となったのは主海氏だった。

本紙のインタビューに対し、「堂々と言うべきことを言ったからか、その後どこからも取材を受けることがなかった」と笑って退(の)けた。それでも、これまで一緒に関係団体の集会やイベントに参加したり、祝辞を寄せたりしていた人々が「一斉に引いていなくなった」ことを悲しんだ。

信教の自由を守ることは重要であるとの揺るがない信念を持つ主海氏にとって、関連団体の代表役員の就任要請を引き受けることや、シンポジウム開催に合わせて立ち上がった「基本的人権・信教の自由を守る熊本県民の会」の会長就任の要請を受け入れることは容易だった。

主海氏は市議時代、佐賀県の唐津市と韓国を結ぶトンネルを構想した日韓トンネルプロジェクトや、朝鮮半島の平和的統一など世界平和を願い若者たちが自転車でPRする活動などを見て共感を覚え、関連団体の役員に名を連ねただけではなく、信者らとも親交を深めた。

「いいことをやって頑張っとるのにね。何も分からないで解散せよと騒いで、岸田総理がそんなのに飛び付いて。何も(真相が)分からないのに声を大きくしたりするもんだから。もう日本ってなんと情けないもんじゃな。日本の政治は本当にお粗末になったなと思っとる」

こう嘆く主海氏は、「信者はもっと堂々と言うべきことを言ったらいい」と教団の信者にアドバイスしているという。文部科学省による家庭連合の解散命令請求は、宗教的価値観の乏しい政治家やマスコミが左翼的思想に影響されて行われたものだと考えているからだ。「日本人の心の素晴らしさは全て宗教から来とるから、そんなこと(宗教団体つぶし)をやったら、日本は、そして、日本人はどうなのか」と訴える。

自身は浄土宗の信仰を持ち、熊本県護国神社の責任役員を務めている。12人いる熊本県神社本庁の役員の中で神官ではないのは主海氏だけだ。「人類にとって宗教は大事なのだが、仏壇や神棚がない家がだんだん増えている。神官がいない神社も増えた」と地域や家から宗教色がなくなりつつあることに懸念を示す。

日本はもともと皇室を中心に宗教的な国だ。「戦前は『修身教育』というものがあった。教育勅語も教えていたし、二宮金次郎像もあった」と話す。

日本人の心が失われた結果、安倍氏を銃殺した山上徹也被告を念頭に、「憎い人物を簡単に殺害してしまう凶悪犯を生んでいる」というのが主海氏の見解だ。

(信教の自由取材班)

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