トップ国内【連載】脅かされる信教の自由⑧ 第2部 地方議会への波紋 政治家に過ち正す責任

【連載】脅かされる信教の自由⑧ 第2部 地方議会への波紋 政治家に過ち正す責任

北九州市議会議員 井上真吾氏 (上)

インタビューに応じる井上真吾・北九州市議=6月26日、北九州市議会
インタビューに応じる井上真吾・北九州市議=6月26日、北九州市議会

「皆さん方が多く苦しむ状況を招いたことについて、私にもその責任の一端があると感じています。しかし、政治家は自ら過ちを犯したのであれば、これを正す責任もあると考えています。私にチャンスがあるのであれば、何でもします」

北九州市議会は2022年12月、「反社会的な旧統一教会に関与しないことを確認する決議」を全会一致で可決した。この決議に賛成したことを後悔しているのは、革新系無所属の井上真吾氏だ。6月30日、北九州市で開かれた「基本的人権・信教の自由を守る北九州大会」に登壇し、強い自責の念を示した。

市議会決議は、家庭連合を反社会的と決め付けた上で、「行事への参加やメッセージなどの送付、会費の納付等の関係を一切持たない」と強い文言で書かれている。

これまで共産党が提出してきた意見書・決議にことごとく反対していた自民、公明両会派も含めて全員がこの決議に賛成。本紙の取材に対し、井上氏は「あなただけが反対している」と複数の議員から言われて圧力を感じ、「自分だけが×(ばつ)と意地を張って足並みを乱してもいけないと思い、仕方なく〇(まる)を付けた」と明かす。

それから3カ月後の昨年2月、北九州市議全員に信者から、信者の人権の配慮を求める文言と共に、紹介議員になってほしいという請願文が届いた。請願に唯一、応えたのは井上氏だ。

「どこの誰と付き合うことなど自由ではないか。付き合うなと人から指図されることではない。個人の内面の問題、人の生き方や考え方、思想信条に関わる問題にまで政党や議会が手を突っ込むような内容で問題だ」。こう話す井上氏はさらに、「信者やその子供たちが学校や地域社会でいじめを受け、社会活動から排除されることが許されていいはずがない」と続ける。

決議の後、悶々(もんもん)とした気持ちだった井上氏にとって請願要請は願ってもないことだった。「このままでは自らの政治的な意思に反して行動したことが残る。チャンスが与えられて行動を改めるきっかけを与えられたことを感謝している」

それまで、井上氏は教団との接点はなかった。唯一、あるとしたら、共産党に入党して間もなく、北九州市の駅前で「仲良さそうな老夫婦からチラシを受け取り、それが家庭連合の信者だったことが後で分かった」ということだけだ。決議によってこの夫婦に信教の自由が奪われることがあってはならないという気持ちがよぎった。

昨年9月議会で共産党が提出した、「旧統一教会の解散命令請求を求める意見書」の反対討論に立った井上氏は、「報道による旧統一教会憎しの世論」の中で、職場を追われる、学校現場でのいじめ、または、イベント会場が借りられないなどの被害が起きていると指摘。その上で、「今でも信仰を持っていて排除・差別されている方からその苦しい胸の内を聞き、彼らが等しく市民として穏やかに暮らせるようにするのが政治の務めではないか」と訴えた。

22年12月の決議の前後、旧統一教会を巡る複数の意見書・決議が提出されているが、自民、公明両会派が反対することで否決されてきた。なぜ関係断絶決議だけ全会一致になったのか。井上氏は、「第一会派の自民が翌年春の統一地方選に勝つため、野党に説得されてしぶしぶ賛成したとなれば格好がつかないと思ったのだろう」と話す。党利党略のために、市民の基本的人権が奪われるのは言語道断だと憤る。

決議翌日、地元だけでなく全国メディアも、関係断絶決議を大々的に報道。「事の大きさを実感」することになった。

(信教の自由取材班)

 いのうえ・しんご 1976年福岡県新宮町生まれ。九州工業大工学部卒。移動式クレーン運転手。2級建築施工管理技士。28歳で北九州市議会議員に初当選。現在、3期目。
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