【連載】脅かされる信教の自由⑥ 第1部 岸田政権の暴走 政権延命のスケープゴート

文部科学省の世界平和統一家庭連合に対する質問権行使について議論する宗教法人審議会=2022年12月14日、東京都千代田区
文部科学省の世界平和統一家庭連合に対する質問権行使について議論する宗教法人審議会=2022年12月14日、東京都千代田区

前代未聞の「朝令暮改」によって、宗教法人の解散命令請求の要件に民法上の不法行為も含むとした岸田文雄政権は、2022年11月22日、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への「報告徴収・質問権」を初めて行使した。

質問権は7回にわたり行使され、被害を訴える元信者などへの聴取が行われた。岸田首相が質問権行使を指示してほぼ1年後、23年10月12日、文科省は同教団の解散命令請求を決定。翌13日、東京地方裁判所に請求した。

政府が民法の不法行為を根拠に解散請求をするのは初めてだ。盛山正仁文科相は、記者会見で、長年にわたり高額の献金被害が続いたとし、「多くの人に悪影響を及ぼした」と強調。これに対し家庭連合はホームページで「偏った情報に基づいて、日本政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極み」と批判した。

決定に先立ち12日に開かれた宗教法人審議会では、盛山文科相が請求を行う方針を表明、全会一致で「相当」と認められた。学識経験者や宗教関係者から成る委員会の了承を取り付けたのだ。

しかし、「全会一致」とは言うものの、異論がなかったわけではなく、そこに至るまでには看過できない深刻な舞台裏の動きがあった。産経新聞10月13日付は次のように報じている。

<宗教界から選出されたある委員は、文化庁の調査が大詰めに入った今年9月、「今でも政府見解の変更には納得していない」と周囲に漏らした。一夜でひっくり返った法解釈に、宗教界は「信教の自由」への影響を憂慮した。それでも文化庁は審議会で「(教団に何もしなければ)内閣が飛んでしまう」と呼び掛け、請求の前提となる質問権行使の正当性を訴えた>

専門家の客観的で公平な意見を聞くために設置したのが審議会であるはずだ。解散請求ありきでその正当性を訴えるなど本末転倒である。しかも、その理由が「内閣が飛んでしまう」というのは、政治権力の延命のために、一宗教団体をスケープゴートにするに等しい。政権は一時的なものにすぎない。しかし、政権延命のために民主社会の基礎となる信教の自由が公然と侵されれば、後々まで禍根を残すことになる。

月刊誌『正論』の令和5年12月号は、「解散命令請求への疑義」特集を組み、「政府のやり方がなぜ問題なのか」と題して、東京キリスト教神学研究所幹事の中川晴久氏とモラロジー道徳教育財団道徳科学研究所教授の西岡力氏が対談している。

その中で、中川氏は「例えば、今回の解散命令請求には、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が集めた証拠や裁判資料、知見の数々が使われています。『事実なので問題ない』という人もいるかもしれませんが、一民間団体、それも教団と長年敵対・対峙してきた組織の主張を政府が代弁し、情報も依存しているのに近い。手続きの中立性と言う意味で大いに疑問です」と政府を批判。

西岡氏も「宗教法人審議会の委員に宗教者がたくさんいました。私のよく知るプロテスタントの牧師で私が以前勤めた大学の前理事長もいました。日本基督教団総幹事もいれば、神道や仏教からも入っています。その人たちが全員、異論を言わず賛成したのも信じられないし、ショックですよ。一体、信教の自由をどう考えているのでしょうか」。

さらに西岡氏は、産経新聞の記事を取り上げ、「文化庁の役人が委員の自宅まで行き、説得し、それも秘密にしながら、一人ずつ篭絡したそうですが、それで宗教者、特にプロテスタントの牧師はほとんど異論をはさまなかったのでしょうか。強い恐怖と信じられない思いです」と深刻な懸念を表明している。

(信教の自由取材班)

=第1部終わり=

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