【連載】脅かされる信教の自由⑤ 第1部 岸田政権の暴走 法治国の基盤失う「朝令暮改」

2022年10月19日、岸田文雄首相と小西洋之立憲民主党参院議員の面会の記録。同年10月20日付の朝日新聞「首相動静」(右)と日本経済新聞「首相官邸」
2022年10月19日、岸田文雄首相と小西洋之立憲民主党参院議員の面会の記録。同年10月20日付の朝日新聞「首相動静」(右)と日本経済新聞「首相官邸」

従来の法解釈との矛盾をはらむ岸田文雄首相の世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に対する質問権行使の表明(2022年10月17日)は、翌日(18日)の衆院予算委で野党の攻撃にさらされた。

立憲民主党の長妻昭議員は、宗教法人の解散命令要件について1995年の東京高裁決定(96年に最高裁で確定)の考え方を「踏襲している」として、「(東京高裁が示した刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に)民法(上)の不法行為は入らない」と言明する岸田首相に対し、執拗(しつよう)に解釈を変更(整理)するよう迫った。

「旧統一教会の本体については刑事的責任が確定判決で問われていない。…文化庁の課長が一貫して言っている政府の解釈を変えない限り、永久に解散請求できない」

2022年10月17日、衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相
2022年10月17日、衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相

首相はこの日、14日に閣議決定した立場を貫いたが、翌19日の参院予算委員会の冒頭、立民の小西洋之議員に対して「政府においても、改めて関係省庁(が)集まり、昨日の議論も踏まえて改めて政府としての考え方を整理した」として、次のように言明した。

「行為の組織性や悪質性、継続性などが明らかとなり、宗教法人法の要件に該当すると認められる場合には、民法の不法行為も入り得る」

宗教法人の解散要件という「信教の自由」と関わる重要な法律の解釈が、一夜にして百八十度変更されたのだ。小西議員は「朝令暮改にも程がある」としながらも、それ以上は追及しなかった。

この「朝令暮改」騒動にはさらに深刻な問題が潜んでいた。首相が真っ先に解釈変更を伝えた小西議員が23年8月22日にユーチューブで解釈変更の舞台裏を暴露したのだ。

小西洋之氏
小西洋之氏

「前日(18日)から首相官邸に当たって、解釈を撤回するように、撤回するときの理由まで授けた」「改めて岸田政府全体で議論したって言ったらいい。そこの部分は追及しないからって言ったら、岸田総理はその通り言った。ただ、これ嘘なんですよ」

小西氏が仲間内の鈴木エイト氏に、首相が私の指南通りに解釈を変更したんだよという自慢話なので、全面的に信頼できるものではない。しかし、19日の首相動静には、首相が参院予算委直前に小西氏に会ったとの記録がある。予算委の直前に質問者の野党議員と会って言葉を交わすのは異例のことであり、実際に小西氏は自ら嘘と断定した「政府全体で議論した」点を全く追及しなかった。「朝令暮改」は政府と野党の馴(な)れ合いで進められた疑いが強いのである。

閣議決定の内容が覆されたこの集まり(会議)の参加者について、政府は固く口を閉ざしている。今年1月31日、NHKから国民を守る党の浜田聡議員は、会議参加者の氏名と役職などを質問主意書で尋ねたが、政府は会議が閣議でなかったことだけは認めたが、「政府部内の検討過程における詳細についてお答えすることは差し控えたい」と参加者名を明かさなかった。また、この会議での決定事項(解釈変更)はその後も閣議決定に付されていない。重大な解釈変更が、ごく少数の側近が非公式に集まって決められた疑いが極めて強いのだ。

東京地検の幹部検事、衆院議員を歴任した若狭勝弁護士は今年6月18日、都内で開かれたシンポジウムで、「家庭連合に対する解散命令請求において一番問題なのは公正性の欠如。法律の解釈、運用を1日で安易に変更した上で、解散命令を請求するということは、法治国家たる基盤を失う」と強く警鐘を鳴らした。

 (信教の自由取材班)

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