厚生労働省が2022年12月に策定、発表し、各都道府県と市町村長に通知した「宗教の信仰等に関係する児童虐待への対応に関するQ&A」(宗教2世虐待Q&A)について、国連人権理事会(UNHRC)の特別報告者4人が、「宗教または信教の自由」「教育の権利」など四つの分野で日本政府に懸念を提起していたことがこのほど明らかになった。

UNHRCの決議によって今年4月に政府に宛てられた通達は、60日間の非公開期間を経てこのほど公開された。通達は、Q&Aがエホバの証人や、他の宗教マイノリティーへの中傷発言を公にしていた「日本脱カルト協会」(西田公昭会長)との協議を重ねる一方、対象となり得る当事者の宗教団体とは一切協議なく策定されたことを指摘している。
またQ&Aが、安倍晋三元首相の暗殺事件を契機に、日本社会で一部宗教団体への「監視とスティグマ(汚名)」が高まる中で策定されたことにも言及。独立した専門家による検討もなく18日間という極めて短期間に策定されたことと併せ、児童の権利をうたう一方で、父母や法定保護者による児童への適切な指導の権利や義務への言及を欠くことのアンバランスも問題視している。
Q&Aの全国への通知に関連して、その後のエホバの証人を標的とした憎悪犯罪の増加にも触れ、総じてQ&Aは「市民的及び政治的権利に関する国際規約(国連人権規約)」など、日本が批准した条約に違反する恐れがあるとして、特別報告者は政府にQ&Aの再考を促している。政府はこれに対して6月、「留意する」などと回答した。
長崎大学教育学部の池谷和子准教授(憲法、未成年者保護法が専門)も今年2月、このQ&Aについて、信教の自由を脅かしているとして憂慮していた。