巨石の「鬼の隠れ里」 秋田県男鹿半島/寒風山の噴火口を歩く

癒される花々、鳥のさえずり

大噴火口の底にある「鬼の隠れ里」。日本の奇岩百景の一つ

秋田県男鹿市といえばナマハゲが有名だが、男鹿半島の付け根にある寒風山(標高約355㍍)に噴火口跡があると知り「寒風山ジオサイト」の一部を歩いた。

火口跡は回転展望台の西側に三つ広がる。大噴火口は直径約700㍍もあり、富士山のお釜に匹敵する広さ。舗装道路を車で行き「鬼の隠れ里」の案内看板前に車を止めた。

大噴火口の底の平坦な道を500㍍ほど歩くと“小さなピラミッド”が見えた。長さが2㍍や4㍍などの巨石群が乱雑に重なった小山だ。平らな石が多く途中まで登った。人が隠れていそうな隙間があり「鬼たちが石を積み上げて寝泊まりした」との伝説もうなずける。粘り気の強いマグマがゆっくりと地上に押し上げられ、そのまま柱状に伸びあがり崩れたと考えられている。

寒風山の火山活動は今から3万年以上前に始まり、何度も繰り返され溶岩が重なり今の形となった。大部分は安山岩で、その上を薄い表土と芝生が覆っている。岩は「男鹿石」と呼ばれ庭石や墓石、護岸にと幅広く使われてきた。

草原となった大噴火口の底では何人もがそこかしこでワラビ取りにいそしんでいた。男鹿市が毎年、山焼きや草刈りを実施している。

さて火口の縁の道路を回り火山地形全体を観察する絶景スポット「板場の台」に着く。火口の底を見ると、高さ5㍍の溶岩堤防と2㍍の溶岩じわが連なっていた。妻恋(つまこい)峠火口から溶岩が流れ出したのだという。

その妻恋峠は回転展望台に行く道の反対側にある。今度は隣接する小噴火口の底にある「風穴(ふうけつ)」に降りていく。風穴は、地下から一年を通して冷たい風が吹く場所で、ゆっくりと冷気が流れ出ていた。

この日、道々には青紫色のアズマギクや紅色のタニウツギ、黄色いウマノアシガタ、白のフランスギクと多彩。黒地に白い帯をもつシロオビクロナミシャクが葉に止まった。チョウに似たガだが美しい。寒風山の広い範囲は国定公園となっており豊かな自然が保たれている。ホトトギスなどの鳥のさえずりに癒やされる。ヤマユリの群生(7月中旬から)、秋のススキも有名。

ふと空を見上げると、パラグライダーが2機飛んでいた。近くにスクールがある。

秋田駅から車でおよそ1時間。男鹿半島の海岸線や大潟村の遠望、秋田市方面も望める壮大な景観、そしてピクニック気分も味わえる風光明媚(めいび)な観光地だった。

(伊藤志郎)

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