「岸田首相来ないで」 大接戦の静岡県知事選、歓迎されない自民幹部

静岡県知事選有力候補の鈴木康友氏(左)と大村慎一氏
静岡県知事選有力候補の鈴木康友氏(左)と大村慎一氏
静岡県知事選の投開票が26日に迫る。地元メディアなどの調査によると、立憲民主、国民民主両党が推薦する前浜松市長の鈴木康友氏(66)を、総務省官僚と県副知事を歴任し自民党が推す大村慎一氏(60)が猛追している。両氏が横並びという報道もある。事実上の与野党対決構図で、結果は岸田文雄首相の政権運営に影響を与える可能性がある。(豊田 剛、写真も)

前知事の川勝平太氏が着工を認めなかったリニア中央新幹線の静岡工区については、鈴木、大村両氏とも大井川の水資源確保や南アルプスの生態系保全を条件に受け入れることで一致する。このほかの主な争点は、少子高齢化及び人口減少対策、均衡ある経済発展、10年以上停止している中部電力浜岡原発(御前崎市)の再稼働だが、政策で大差がない。そのため、盛り上がりに欠ける。

自民党は、先月28日に行われた衆院補欠選挙は不戦敗も含め3戦全敗だった。巻き返しを図りたい岸田政権だが、自民党本部は告示日前日の8日、大村氏に推薦を出した。ところが、党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件の影響で、非自民の支援者からは結果として「逆風になる」として困惑を隠せない。

地元の自民党議員の疑惑やスキャンダルが逆風を強める。浜松が選挙区の塩谷立・元文科相は、安倍派の裏金問題で除名処分された。磐田市を地盤とする宮沢博行衆院議員は女性スキャンダルで4月23日、突然辞任した。

大村氏の選挙運動員は自民主体だが、告示前に行われた事務所開きでは旧民主党の元衆院議員、無所属の参院議員、県議会の非自民県議らが駆け付け、政党色は薄まった。

ある保守系の静岡市議は「党の応援が大村候補の追い上げムードに水を差しかねない」と危惧する。地元静岡1区選出の上川陽子外相が2週末続けて応援に入っても「プラスにならない」と強調。「岸田氏が静岡入りしようものならおしまいだ」とまで言い切った。

一方、旧民主党衆院議員だった鈴木氏は前回知事選で自民が擁立を検討した人物。菅義偉前首相の盟友として知られ、2021年の衆院選でも応援に入ったことがある。自民は大村氏に推薦を出したものの、浜松の自民市議らは鈴木氏を推すなど、分裂含みだ。

政策自体が争点にならない分、「浜松(西部)の鈴木対静岡(中部)の大村」という構図が鮮明になり、お互いの牙城の切り崩しを図っている。鈴木氏は静岡市で行った演説で、4期16年の浜松市での財政健全化の実績を強調、浜松での経験を県レベルで生かす意向を示したが、「聴衆の反応は芳しくない」(鈴木陣営)。大村氏は、浜松市で建設予定の県営野球場について、費用や環境面から「ドームありきの議論はやめ、ゼロベースで再検証する」と訴え、西部での浸透を図る。

自民の調査では、西部では鈴木氏が大村氏を圧倒。中部は大村氏がリードしている。勝敗の行方を占うのは、東部・伊豆地方とこれまで川勝氏を支持していた無党派層だろう。

共産党県委員長で同党公認の森大介氏(55)は、リニア建設と浜岡原発再稼働に反対。鈴木、大村両氏に対する批判票の受け皿として存在感を示しつつあるが、広がりに欠ける。

知事選にはこのほか、政治団体代表の横山正文氏(56)、自営業の村上猛氏(73)、会社社長の浜中都己氏(62)も立候補している。

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