能登半島地震で中止の青柏祭「でか山」巡行

神事と散楽で来年の開催誓う

「共助の精神が復興の力に」

境内で披露されたシルク・ドゥ・ソレイユのメンバーによる「散楽」

能登半島を代表する祭りの一つ、石川県七尾市の青柏祭(せいはくさい)。その中心行事である「でか山」の運行は、元日の地震被害で中止となったが、5月4日、大地主(おおとこぬし)神社で神事が営まれ、参列者が来年の「でか山」運行を誓った。

でか山は、高さ12㍍、重さ約20㌧ある巨大な山車で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている。地震で道路が至る所で破損したため、市内巡行は中止せざるを得なくなったのである。

神事では拝殿で青い柏(かしわ)の葉に農作物や魚介を載せた供え物が捧(ささ)げられ、大森重宜宮司が祝詞を奏上。でか山を巡行する「やま町」の鍛冶町、府中町、魚町の総代ら関係者が玉ぐしを捧げた。続く疫病退散を願う「道饗祭(みちわさい)」で締めくくられた。

境内では、でか山巡行中止の代替イベントとして、世界的なサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」のメンバー2人による「散楽(さんがく)」が奉納された。曳山行事の由来となる猿神伝説を、祝い唄「七尾まだら」をバックに現代的なパフォーマンスで表現。アクロバティックで力強い演技が参列者や見物の人たちを魅了した。

「散楽」について大森宮司は、「実はこの神社は七尾城が落城した時に、灰燼(かいじん)と化したのですが、前田の殿様(利家)が七尾に入ってこの神社を再建してくださった。その時、猿楽を奉納している。その故事に則(のっと)ったものですが、その原点に返るという意味もあります」と説明する。

もう一つの代替イベントとして行われたのが「やま町」3町の若衆による木遣(きや)りの披露。3町がそろっての木遣りは今回が初めてだ。

若衆が力強く木遣りを唄(うた)うのを聞きながら、「皆さんの心が一つになっているのが分かります」と大森宮司。「お祭りは共助の象徴です。ややもすると公助に頼ろうということになるが、お祭りをすることによって、共助、自助の精神がもう一度出てくるのではないか。阪神淡路の大震災でもお祭りをちゃんとしていたところから復興していったという事例がある」と語る。

能登半島は、祭りの盛んな地域で、故郷を離れた人でも、祭りの時は帰って来るという土地柄。地域コミュニティーの存続が危ぶまれる中、復興と結束の要として祭りの重要性は増していきそうだ。

(特別編集委員・藤橋進)

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