和倉温泉 若手経営者ら復興ビジョン【連載】立ち上がる能登 復旧から復興へ<中>

全国有数の温泉地の一つ石川県七尾市の和倉温泉も、今回の地震で大きな被害を受けた。コロナ前には年間70万~90万人の宿泊客が訪れた和倉の22の旅館(収容人数約6600人)は今も休業に追い込まれ、再開の見通しは立っていない。それでも、若手経営者らが立ち上がり復興ビジョンを県に提示するなどの動きが徐々に始まっている。

和倉温泉で被害を受けた建物を検 分する温泉関係者 = 5日、七尾市

温泉の源泉は発災後2週間ほどで大丈夫であることが確認された。しかし、各旅館に温泉を送る配管が複雑に損壊しており、旅館内の温泉は使えない。建物のダメージも大きい。和倉温泉観光協会の宮西直樹事務局長によると、一般の宿泊客を受け入れられるようになるには「少なくとも1年以上」はかかるとの見通しだ。

和倉温泉は静かな七尾湾に面して多くの旅館やホテルが立ち並び、そこからの眺めが大きな魅力の一つとなっている。ただ、地震で護岸も大きな被害を受けた。護岸には私有地も含まれており、復旧の道筋を複雑にしている。

そんな中でも、宿泊者受け入れ可能な部屋のある九つの旅館で、インフラなど復旧業者に限り宿泊を300人近く受け入れている。食事の提供や温泉施設の利用はできないが、復旧の重要な支えとなっている。観光客や地元の人たちに人気の共同浴場「総湯」が3月26日に再開。水道も今月1日、3カ月ぶりに復旧した。水道の通水によって、宿泊所への配管の修繕が可能となり、復旧業者の受け入れも増やすことができ、復興のスピードの加速が期待される。

宮西事務局長によると、震災発生後、「毎年和倉温泉に来るのを楽しみにしていた。一日も早く復興してほしい」など多くの励ましのメッセージが届いた。元日宿泊していて近くに避難したお客さんからは、「旅館の人がずっとケアをしてくれ感動した。早くまた行きたい」というものも。

地震発生後、議論を重ねてきた地元の旅館や飲食店の若手経営者などが「創造的復興ビジョン」を策定し、3月11日、石川県庁を訪ね馳浩知事に提出した。ビジョンでは和倉温泉だけでなく能登半島全体が大きなダメージを受ける中で、和倉温泉再生の目標像を「能登の里山里海をめぐるちからにする」とした。これまで有数の温泉地ということでほぼ自足していた和倉温泉を能登観光全体の中に改めて位置付け、復興の指針としようというものだ。

「創造的復興が一つのキーワードとなっていますが、今のマイナスの状態からゼロに戻すだけでは意味がない。プラスにするという展望を持っていきたい」と宮西事務局長は語る。「例えば旅館づくりにおいても、これまで団体客が多かったが、これから個人旅行がさらに増えてくる。建物もそういう旅行者の変化に合わせる必要がある。温泉街にしても、個人のお客さんは旅館内から外に出て買い物をしたり、アクティビティに参加するなどの指向性があります。そういうニーズに応える施設をつくるなどしていかないといけないでしょう」と語る。

当初は被害の大きさに茫然(ぼうぜん)自失した旅館経営者も少なくなかった。しかし、若手経営者を中心に、ピンチをチャンスに転じ、和倉を能登復興の拠点にしようとの意気込みが生まれてきている。(能登半島地震取材班)

spot_img
Google Translate »