自民は不戦敗 岸田首相は窮地に 衆院補選東京15区 国政見据える小池知事誤算も

街頭で通行者らにあいさつする乙武洋匡氏 (10日午前、東京江東区のJR亀戸駅前)
「政治とカネ」の問題で岸田政権と自民党の支持率が低下する中、衆院補選が16日告示、28日に投開票される。混戦が予想される東京15区(江東区)では、小池百合子東京都知事が推す候補に自民が推薦を出さないことが決まり、不戦敗が確定した。島根1区で自民公認候補が敗れれば、岸田文雄首相は窮地に追い込まれる。(衆院補選取材班)

「裏金問題で処分された安倍派や二階派の議員は、不公平とかずるいとか言い合っているが、そもそも議員と庶民との間に不公平がある。裏金づくりと内ゲバが自民党の正体だ。もう自民党に投票するのはやめましょう」

LGBT理解増進法などを巡り保守の立場から自民党批判を強める日本保守党公認の飯山陽(あかり)氏(48)は5日、演説の大半を自民批判に割いた。立憲民主党公認で共産党が支援する元江東区議会議員の酒井菜摘氏(37)も厳しい自民批判を繰り返している。

街頭であいさつする日本保守党の飯山陽氏 (10日午前、東京江東区のJR亀戸駅前)

候補者乱立が予想される東京15区のほとんどの候補が自民批判を訴える中にあって、自民の頼みの綱は小池知事だった。茂木敏充幹事長は2日、小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」(以下、都ファ)が擁立する乙武洋匡氏(48)を推薦する意向を表明した。乙武氏は都ファの国政進出を目指して設立された「ファーストの会」副代表に3月28日付で就任した。

乙武氏は8日出馬会見で、「現時点では、どの政党にも推薦依頼は出していない。政策を見て、推薦したいとの思いを持ってもらえるなら、話をしたい」と述べていた。さらに同日夜、自身のX(旧ツイッター)で「自民党に推薦依頼は出していませんし、推薦を頂く予定もありません」と書き込んだ。これを受け、自民党は12日、乙武氏の推薦を見送ると発表した。

昨年12月の江東区長選では、元都職員の大久保朋果氏が小池氏の後押しで初当選。今年1月の八王子市長選では自民が推薦候補の劣勢をはね返すべく小池氏に支援を依頼。小池氏が応援に入ったことで形勢を逆転させ、元都職員の初宿(しやけ)和夫氏を当選に導いた。

小池氏は3月28日、「乙武さんをよろしく」と自公両党の都連幹部に電話をしたとされる。しかし、自公が乙武氏を応援する環境は整っていなかった。乙武氏は2016年の参院選で自民党の公認候補として擁立される予定だったが、5人の女性との不倫が週刊誌に報じられると、急遽(きゅうきょ)出馬を取りやめた。

公明党にも慎重論が根強く、自主投票になる公算が大きい。高木陽介政調会長は、「地元の声は大変厳しい」とコメント。石井啓一幹事長は12日の記者会見で、「自主投票になるかも含めて対応は未定だ」と述べた。

自民党で政務調査役を務めた政治評論家の田村重信氏は、「公明には底力があり、全国的に支援したら強いが、支持母体の創価学会女性部の乙武氏に対する反発は大きい」とした上で、「小池氏がどう調整するか、手腕が問われる選挙になる」と分析する。小池氏が7月7日投開票の都知事選に出馬するのは既定路線だ。「いずれは国政でトップを射止めたい小池氏が今後、岸田首相にとって代わろうとするかもしれない」(田村氏)が、今回のドタバタ劇で小池氏の計算は狂った。今月発売の文芸春秋は小池氏に関する都ファ元幹部の告発を掲載。学歴詐称疑惑が再燃している。

東京15区補選は、昨年の江東区長選を巡り公選法違反事件で柿沢未途前法務副大臣(53)が辞職したことに伴い実施される。柿沢氏の前任の秋元司元衆院議員(52)は統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件で逮捕された。2代続けて「政治とカネ」の問題で辞任していることから、「自民党政治の腐敗の象徴」とも言われるなど、自民に激しい逆風が吹いている。

衆院3補選のうち、自民は長崎3区で公認候補擁立を見送った。保守王国の島根1区でも劣勢が伝えられている。田村氏は、「間違いなく選挙後に岸田批判が増長する。9月の自民党総裁任期まで果たして岸田氏が持つかどうか。とても解散できる情勢ではない」と厳しい見方をする。

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