
地方の共産党議員が自治体職員に不当な圧力をかけて共産党機関紙「しんぶん赤旗」の購読を迫るパワハラ事例が全国で次々と明らかになっているが、愛知県あま市(人口約8万8千人)でも「赤旗」を購読しなければ「一般質問するぞ」と強要していた事実のあることが分かった。同市が昨年1月、522人の職員に行ったパワハラ実態アンケート調査で判明した。同市は、「購読に強制的なイメージがある」として、定期購読をいったん白紙とするなどの措置を取った。(「しんぶん赤旗」問題取材班)
アンケートは、「市議会議員による市職員に対するパワーハラスメント等の状況を把握することを目的」として匿名の形で行われたもので、回答数は305人(回答率58・4%)。本紙が入手した調査結果の文書には「しんぶん赤旗」や共産党の文字はなく、政党機関紙あるいは所属政党を「●」の表記に変えているが、前後の文脈や関係者の証言から共産党機関紙または共産党議員と推測できる。調査内容は①脅迫・名誉棄損・侮辱・暴言②隔離・無視③業務上明らかに不要、過大な要求④私的なことに立ち入る⑤強要⑥その他――に分けて行われた。
中でも⑤の「強要」では、「●●新聞の購読は表向きは強制されていないが、購入しないと議会対応等の影響が予想され、実質購読を強制されている」と記され、「日曜版のみならず、日刊までも購読させられている」や「購読しないと一般質問するぞと脅していた」ことが例示されていた。また、現職議員ではないにもかかわらず「執務スペースにズカズカと入ってきて政党機関紙を幹部職員に売りつけに来るのは問題であり、即刻止(や)めさせるべきだ」との意見もあった。さまざまなパワハラにより、多数の職員に睡眠障害、動悸(どうき)、息切れ、仕事が手に着かない、体の震え、議員と会話をしたくなくなった、やる気の低下などの影響が出ているという。
「政党機関紙の庁舎内勧誘行為の自粛を求める愛知県民の会」の高木健吉代表は1月17日、「勧誘の実態調査を求める」要望書を同市に送付。その結果、同市総務部総務課は「定期購読を一旦白紙とし、改めて希望する職員については個々で申し込むことを販売者に伝える措置をとった」旨の回答書(2月6日付)を高木代表に送った。同市は「現在は勧誘が行われることは想定していない」としている。
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愛知県津島市(人口約6万人)は、昨年12月議会で「政党機関紙の庁舎内勧誘の自粛を求める陳情」が採択されたのを受け、総務部長名で各部課長宛てに「庁舎内における『政党機関紙』の勧誘等について」と題する通知文(1月19日付)を配布した。

通知文は、市側と市議会会派が相互に確認したもので、「1 個人の意思による契約」と「2 勧誘・配達・集金」の2点で構成。1では、「購読の契約は、いかなる場合も、個人の意思が優先されるものであり、このことによる有利・不利な扱い等は一切生じないものであること」としている。2では、「執務時間外(昼休み等)」に「執務スペース外(新聞受け、カウンター越し、廊下等で来庁者や職員の妨げにならない範囲)」で行うことを規定している。
その上で、「負担に感じている場合があると考えられる」ことから、「購読の不可・終了等については、気軽に意思表示していただければ大丈夫です」とわざわざアンダーラインを引いて太文字で書き添えている。
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東京都では目黒区(約28万人)が3月6日、3月議会「政党機関紙の庁舎内勧誘の自粛を求める陳情」を23区で初めて採択したのに続き、港区(人口約26万6千人)が13日、同議会で同様の請願を採択した。このケースで紹介議員を必要とする請願採択は全国の自治体で初めて。また、都内の自治体として初めて実態調査が行われることになる。
請願人で「政党機関紙の庁舎内勧誘の自粛を求める都民の会」代表の村上誠氏は、「港区では7人の議員が紹介議員になってくれた。この問題に議員が真剣に向き合ってくれてとても嬉(うれ)しく思う」と話し、23区すべてを含め近隣自治体へ動きが広がることを期待した。政党機関紙の庁舎内勧誘行為の実態調査を求める陳情は、過去1年の間に40の地方自治体で採択されている。