むかし、女、ありけり―犀星の王朝小説―
金沢市の室生犀星記念館では、企画展「むかし、女、ありけり―犀星の王朝小説―」が開かれている。犀星は昭和15年に発表した「荻吹く歌」を皮切りに、戦中から戦後にかけて「伊勢物語」「大和物語」などの平安王朝文学に着想を得た小説を次々と発表し、独特の王朝世界を繰り広げた。
また晩年には舞台化・映画化もされた「舌を噛み切つた女」や野間文芸賞を受賞した「かげろうの日記遺文」など、完成度の高い円熟した王朝文学を描いている(同パンフレットより)。同展示では40編以上にのぼる犀星の王朝文学の世界を紹介している。
作品群について、小説家で文芸評論家の中村真一郎氏は、「哀しいまでの美しさを後代に曳く遙か王朝の女性たち、その情感の糸にふれ,人間の魂の奥底を恐ろしいほどに照らし出した詩人犀星ならではの小説世界」(同)と高く評している。
作品は他に「姫たちばな」「津の国人」「玉章」「花桐」「荻吹く歌」「野に臥す者」「舌を~~」を収録し、詩人犀星ならではの小説世界を描き出している。
展示期間は3月2日(土)~7月7日(日)まで、拝観料は一般310円、65歳以上210円、高校生以下無料。問い合わせは(電)076(245)1108。
(日下一彦)