秋田県立美術館など3会場 ミニ即興演奏会も
秋田県立美術館(秋田市)など3会場で、このほど秋田公立美術大学の卒業・修了展が開催された。中でも、ガラス、そして土器で音を出すという試みが発表され、注目を集めた。
ガラス作品を作ったのは加藤怜生(ときお)さん。4枚のガラス円盤がつるされている。そのうち2枚は10㌢ほどの間隔をあけたセット作品。作品名は『trace』。スポットライトを浴び、床には同心円状のきれいな模様が、また天井にも反射した光が映し出されている。
加藤さんが木琴をたたくようなバチをとってコォーーンと鳴らした。4本のバチはコルクやフェルト、ゴムなど先端部が異なり音色が違う。記者もたたくとカーン、トトトーン。なぜかこころ安らぐ音色だ。
加藤さんは、「普通、ガラスって壊れやすいと思われて見るだけじゃないですか。光の表現もそうですが、鑑賞者がたたくことで音が出る、見るだけでは分からないことを体験してほしかった」。
1人が鳴らすと、音につられて結局4人の女性来場者のミニ即興演奏会となった。中央と周辺部で、また力の入れ方で音が違う。耳を近づけると残響が揺らいでいた。ガラス円盤は直径約55㌢、厚さ1~2㌢、重さは約5㌔㌘。慎重に重心を見極めて穴を開けワイヤーでつるしている。
「大学でないと、これほど大きな作品はできない。ガラスを1年中溶かしておく炉も必要だし、大きな作品の制作には手元をガラスの熱から防いでくれたり作業用の炉の開閉など助手が必要ですから」
一方、「土楽器」を発表したのは矢﨑舞子キアラさん。横笛や大きな急須、ラッパが二つ開いていたりと色合いも豊かな20個を超す焼き物だ。4人で即興演奏する映像が流れている。吹く人が多いが、中にはたたく、棒でこするなど自由に演奏していた。
矢★さんは、学内インタビューで「さまざまな楽器の演奏経験を活かし、多種多様な奏法を土でも作ることができるのかを研究。音に深みを出したり、音域を増やしたり、一つの楽器から複数の音が出る楽器を作ったりと、ひらめいた楽器をそのまま形にし、バリエーションを増やした」という。
(伊藤志郎、写真も)