検証 家庭連合解散命令請求―暴走した政治とメディア(中) 暴走仕向けた野党 国家権力利用し教団攻撃

政府が宗教法人法の解釈を変えることは、当然すべての宗教法人に影響する。従来、宗教法人の解散命令請求の要件は同法81条第1項の第1号について「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をしたこととの解釈を明示し、第2号の「宗教法人法二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為」(1995年12月19日東京高裁)と共に併記されていた。だがその第1号についての解釈が岸田文雄内閣の下で一夜にして「民法上の不法行為も含まれる」(2022年10月19日参院予算委員会、岸田首相答弁)と解釈変更されたのである。

<前回>検証 家庭連合解散命令請求 暴走した政治とメディア(上)政府与党の急変

世界平和統一家庭連合(旧統一教会、家庭連合)だけでなく、宗教法人への解散命令請求のための質問権行使の可能性は一挙に広がった。それだけ宗教に対する国家権力を強めたことになる。文化庁宗務課の統計で宗教法人は約18万あり、宗教人口は1億8000万人と数字上は日本の人口を超える。つまり国民大多数に影響する。

だが、それほどの法解釈転換が政府部内で限られた人々の判断で行われた。浜田聡参院議員の質問主意書(1月31日)への岸田首相の答弁書(2月9日)では、閣議決定もなく政府部内の検討についても詳細を明かさなかった。

従来、「国家権力」に目を剥(む)く野党はこれを何も問題視していない。参院予算委で首相の解釈変更答弁を引き出した立憲民主党の小西洋之議員は「朝令暮改にも程がある」と言ったが、解釈変更については追及しなかった。

後日談として小西氏は、23年8月のトークイベントで「民法の不法行為も適用できると考えを変えたと言ったらいい。そこの部分は追及しないから、と言ったら、岸田総理はその通り言った」などと発言。その動画がX(旧ツイッター)などで拡散した。日頃、政府与党の「暴走を許さない」などシュプレヒコールを上げている野党が、政府の暴走を仕向けたのだ。

野党は15年の安保法制を巡って、集団的自衛権の行使を限定的に認める憲法解釈変更をした閣議決定に激しく反対し、当時の安倍晋三首相に対して「アベ政治」とののしって敵視した。国会内では牛歩戦術で抵抗し、院外では連日のように抗議デモを行った。

安保法制の根拠となる閣議決定を撤回することを大義名分に始まったのが、共産党の政権参加を視野に野党第1党の民主党(当時)が協力する「野党共闘」だった。半面、憲法の定める信教の自由の保障を後退させかねない、宗教法人法解釈変更については閣議決定すらない、ずさんな問題のある手続きを「野党共闘」は後押ししたのだ。

「野党共闘」に結集する政治勢力は、安倍氏を銃撃した山上徹也被告の「安倍氏と旧統一教会は近いと思った」という認識と共通している。同事件後は安倍氏の国葬への反対と併行して、自民党と旧統一教会および友好団体の国際勝共連合などとの「接点」を批判。安倍政権時代の保守政治を攻撃する材料としながら、旧統一教会への解散命令請求に向けた質問権行使を進めさせたと言える。

だが民主主義は手続きが重要だ。問題ないのか。

戦前、野党が招いてしまったのが軍の暴走だった。1930年帝国議会でロンドン海軍軍縮会議を巡り野党・立憲政友会は「統帥権干犯」の追及で、浜口雄幸首相の民政党政権を追い詰めようとした。軍縮に不満のある国民感情とマスコミを刺激し、時代の空気は戦争に向かうのを抑えられなくなった。解散命令請求における与野党、マスコミも似ていないだろうか。(宗教と政治取材班)

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