検証 家庭連合解散命令請求 暴走した政治とメディア(上)政府与党の急変

閣議決定を一夜の〝密室〟で覆す

文部科学省が昨年10月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、家庭連合)の解散命令請求を東京地裁に申し立てるに当たり、岸田文雄首相は閣議を開かずに請求の根拠となる宗教法人法の解釈を変更したことが、浜田聡参院議員が1月31日付で提出した質問主意書の9日付答弁書で明らかになった。宗教法人にとっては「死刑宣告」に等しい解散命令の請求を簡素な手続きで済ませた岸田氏の決定など常軌を逸した政治の動きを検証する。 (宗教と政治取材班)

宗教法人を管轄する文部科学省の文化庁宗務課は、旧統一教会への解散命令請求について、教団幹部が刑事事件を起こしていないことから、「請求の対象ではない」などと答弁しており、2022年10月14日の閣議でも確認された。

岸田首相が民事事件も対象と法解釈変更の国会答弁をしたことに対する浜田聡参院議員の質問主意書への答弁書で、やはり閣議を経ていないことを政府は認めた。まさに密室政治だ。

宗教と政治の問題に詳しい元武蔵野女子大教授の杉原誠四郎氏は、「閣議を経ずに関係省庁と協議して解釈変更をしたのであれば、政府の回答は苦しい」と指摘。「少なくとも閣議決定せず解釈の変更を行ったことは確かなことになったといえ、それ自体かなり大きな問題だ」と批判する。宗教法人に対する“死刑宣告”、そして数万もの信者の人権をあまりにも軽く考えているとのそしりは逃れられない。

宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をした宗教法人に対し、文科省の請求などにより、裁判所が解散を命じられると定めている。そもそも、旧統一教会に解散命令請求の要件である「刑事」の違反はないと同年10月14日の政府答弁書は指摘していた。

解散命令請求させるよう岸田氏を問い詰めた立憲民主党の小西洋之参院議員が質問主意書で請求をおこなっていない根拠を問うても、「係属中の事件に関わる事柄」であることを理由に明言を避けていた。

自民党は、野党やマスコミ、左派系有識者らに踊らされる形で教団および関係団体との接点があるか所属国会議員に調査した。22年8月には、「旧統一教会および関連団体と一切関係を持たず、社会的に問題が指摘されている団体とも関係を持たない」方針を発して、関係があったことを認めた議員を閣僚などから外すことで批判の矛先をかわそうとした。

さらに、河野太郎消費者担当相が、消費者庁の「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」に同教団を告発する複数の人物を恣意(しい)的に任命したことからしても、中立性を欠く。

岸田氏の暴走は、昨年末から問題になった自民党派閥パーティー券収入不記載(裏金)問題でも起きた。この問題が明るみに出るや、岸田氏は12月7日、岸田派会長を辞任すると突如表明した。

岸田派と本人にも裏金疑惑がある中で、自らが党政治刷新本部の本部長を務め、裏金問題で窮地に立たされていた安倍派と二階派に“抜け駆け”の形で派閥解散を宣言。派閥主催パーティーの開催禁止を含めた改革案を出した。派閥廃止に否定的な意見を唱えていた麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長を押し切ったことで、「三頭政治」とも呼ばれてきた3者の協力関係に亀裂が生じた。

旧統一教会と裏金問題の対処方法から明らかなように、党内では「岸田首相はポピュリスト」ともっぱらの評判だという。

22年10月には教団と付き合いがあったとされる山際大志郎経済再生相(麻生派)を辞任させたが、現内閣でも接点が浮かび上がる。解散命令を請求した当人の盛山正仁文科相(岸田派)が21月10月の前回総選挙で旧統一教会の支援を受けていたことが明らかになり、野党から激しく追及されている。「旧統一教会との関係は今は断っている」と盛山氏を擁護する岸田氏も、関連団体トップと面会した過去があることが分かっているが、辞任ドミノを恐れるあまり知らぬ顔をして乗り切ろうとしている。これでは、以前関係があったとして閣僚を外された議員との整合性が保てない。

もともと「違法性はない」選挙協力を自ら問題にしたのは、首相ら自民党だ。延命のため世論に踊らされたツケは高く付く。

spot_img
Google Translate »