きょう、44回目の「北方領土の日」を迎えた。2月7日は日本とロシアの国境が択捉島とウルップ島の間にあることを定めた「日露通好条約」(1855年)が調印された日だ。北方領土が国際的にも明確に日本の領土となったこの日にちなんで、国民の理解と関心を深めることを目的として制定された。
北方領土とは北海道の北東に浮かぶ択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の四つの島々を指す。第二次世界大戦末期に日ソ中立条約を破棄して対日参戦したソ連は、日本のポツダム宣言受諾後にこれらの島々を占領。4島に暮らしていた約1万7000人の日本人を強制退去させ、一方的に自国に編入した。不法占拠は現在も続いている。
日本は北方領土問題を解決してロシアとの間に平和条約を締結するとの基本方針に立って2国間で対話を重ねてきた。しかし2022年2月のウクライナ侵攻を受けて発動した対露制裁にロシアが強く反発。一方的に平和条約締結交渉の中断を通告し、北方領土での共同経済活動に関する協議や、元島民らによる墓参、「ビザなし交流」などの交流事業についても停止すると宣言した。北方領土問題を議題にあげた日露首脳会談も21年10月以来行われていない。
この1年間にも、ロシアは強硬姿勢を強めている。ロシア検察庁は昨年4月、北方領土の元島民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)」を「好ましからざる団体」に認定した。千島連盟はこれまで返還運動のための啓発活動を長年続け、交流事業なども行ってきたが、この認定によってロシア国内での活動が禁止され、関係者の入国も制限されることになる。今後、墓参などが再開されたときに千島連盟の元島民らが参加できない事態も懸念される。
さらにプーチン大統領は1月11日、北方領土について「残念ながら一度も足を運んだことはないが、必ず行くつもりだ」と語り、初訪問に意欲を示した。北方領土には10年に当時のメドベージェフ大統領が旧ソ連、ロシアの国家元首として初めて訪れ、プーチン政権でも副首相らが択捉島を訪問している。
交流事業が中断している間に、北方領土には観光客向けの宿泊施設が増え、交通網やインターネット回線などのインフラが整備されるなど着々と開発が進んでいる。それだけでなく、北方領土への「敵の上陸阻止」を目的とする大規模な軍事演習も恒例化しつつある。
一方、日本では内閣府が昨年10月から11月にかけて北方領土問題に関する世論調査を行った。ロシアが不法占拠している現状を「知らない」と答えた人が35・0%に上った。中でも30代以下では約半数が「知らない」と回答しており、若者の認知度向上が急務だ。
ウクライナ侵攻を機に日露関係は悪化し、北方領土問題の解決も不透明感が増している。ただロシアが覇権主義的な動きを続けることで国際社会で孤立感を深めていることも事実だ。昨年の北方領土の日には、駐日米大使が改めて北方領土問題における日本への支持を表明。ウクライナのゼレンスキー大統領も「日本政府や日本人と連帯する」との声明を発表した。国内への啓発と同時に、国際社会へ向けてロシアによる不法占拠の不当性を訴え、理解を得ることが重要だ。4島返還に向けて、これ以上の一方的な行動を許してはならない。