
伝統的に保守が強い群馬県の前橋市長選で4日、自民党と公明党が推薦した現職市長が、野党の新人女性候補に敗北した。自民党派閥のパーティー収入不記載事件で国民の政治不信が高まる中、岸田文雄首相は自らの派閥を解散するなど、局面打開を図っているが効果はない。支持率で低迷する岸田内閣と自民は打つ手なしの状況だ。
群馬県は、福田赳夫、中曾根康弘、小渕恵三、福田康夫の4首相を輩出した「自民王国」だ。県選出の国会議員は衆院5議席、参院2議席と自民が独占する。そのうち、小渕元首相の娘、小渕優子衆院議員は選対委員長を務めている。それだけに衝撃は大きい。自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長は5日、「群馬は言わずと知れた自民党王国。今日の自民党の状況が選挙に影響を与えたことは間違いない」と自身のX(旧ツイッター)に書き込んだ。
4期目を目指した山本龍氏(64)は、事件の影響をもろに受けた形だ。2020年市長選での保守分裂のしこりで一部保守層が離れたことも響いた。野党が支援した県議の小川晶氏(41)は、最大の支持母体である立憲民主党の推薦を断った上、共産が表に出ないようにするなど、「市民党」アピールが奏功した。
前橋市長選と同じ4日投開票の京都市長選も、岸田政権の危機的状況を反映する結果となった。共産が強い地盤とはいえ、自民、立民、公明、国民民主が相乗りで推薦した元内閣官房副長官の松井孝治氏(63)は、共産の支援を受けた無所属新人に約1万6000票差の辛勝だった。
選挙戦を通じて、自民党の国会議員が前に出ることはなかった。自民府連会長の西田昌司参院議員が411万円のパーティー収入還流を受けていたことも足を引っ張る形になった。
小渕氏は、前橋市長選について沈黙したままだが、京都市長選について「今年最初となる大型選挙で、わが党が支援した候補者が勝利した意義は大きい」とコメントを出した。政治評論家の田村重信氏は、「どちらの選挙も岸田政権の政治とカネの問題に対する厳しい審判だった」と指摘。京都市長選に関しては、「最後は公明の組織的運動で勝ち切ったが、岸田政権が追い込まれていることに変わりはない」と分析した。
4月28日に控える衆院島根1区、長崎3区、東京15区の各補選への影響も避けられない情勢だ。(豊田 剛)
前橋市長選開票結果
当 60486小川 晶 無新
46387山本 龍 無現
=確定得票=
京都市長選開票結果
当177454松井 孝治 無新
161203福山 和人 無新
72613村山 祥栄 無新
54430二之湯真士 無新
2316高家 悠 諸新
=確定得票=