東大寺に春を告げ 若狭と奈良を繋ぐ「お水送り」

 

東大寺に春を告げる祭り「お水取り」は修二会(しゅにえ)とも呼ばれ、1300年余の歴史がある。3月1日~14日まで繰り広げられ、クライマックスが12日深夜から翌日の未明だ。その水を送っているのが、福井県若狭地方。直線距離にして60㌔余り離れている。

謂(い)われは、東大寺を開山した良弁僧正(ろうべんそうじょう)が大仏建立に際し、若狭で修行していた高弟のインド人渡来僧・実忠(じっちゅう)和尚を招いた。天平勝宝4(752)年、実忠が東大寺二月堂を建立し、「お水取り」を開催。平安時代の寺誌には、その折全国の神々を招いたが、神宮寺の神だけが漁に夢中になり、遅刻した。そのおわびに、本尊(ほんぞん)に供える「お香水(こうずい)」を若狭から送ると約束した。

実忠が二月堂の下の岩をたたくと、不思議にもきれいな聖水が湧き出した。以来、この井戸は若狭井(わかさい)と名付けられ、本尊に供えるお香水を汲み上げ、今日まで続いている。

火は境内の大護摩(ごま)に移され、松明(たいまつ)行列へと受け継がれる。ほら貝を吹く山伏姿の行者を先頭に、6人の白黒鵜(う)童子とお香水を護る白装束の僧ら総勢50人余が続く。40分余りかけて上流の鵜の瀬へ向かう。

到着すると、いよいよ送水の儀式が始まる。住職が送水文を読み上げ、神宮寺にある「閼伽井(あかい)」と呼ばれる井戸から汲み上げ、竹筒に入れたお香水を遠敷川の深い淵へ注ぐ。儀式は40分ほどで終わり、お香水は地下水脈で、鵜の瀬から10日間かけて「若狭井」に届くとされる。

(日下一彦)

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