埼玉県飯能市の大通り商店街は、江戸時代に、六斎市(ろくさいいち)と呼ばれる月に6回の定期市が開かれた所。「飯能縄市」ともいわれた。この通りには歴史的建造物がいくつも残っていて、その一つが市指定の有形文化財、「店蔵絹甚(みせぐらきぬじん)」だ。
店蔵とは土蔵造りの店舗のことで、火災から守るための形式で、粘土と漆喰(しっくい)で被われた耐火構造になっている。1階屋根の両側には「うだつ」という防火壁まである。屋根上の「青海波」模様の棟飾りも見事。
この建物は明治37年、篠原甚蔵・長三の建設によるもので、絹織物、生糸、蚕種(さんしゅ)など絹関係の商品を扱い、屋号が「絹甚」だった。見た目も重厚で、店舗の奥に住居、中庭、3棟の土蔵などがあるという。
その頃、ここで配布された「引き札」という色鮮やかな宣伝用チラシも残されていて、近代広告の元祖とされている。木版、石版、活版と時代の変遷があったそうだが、初期のものは浮世絵風で、デザインも見ごたえがある。
店蔵絹甚は平成19年度に復元修理工事が行われて、毎週水曜日から日曜日にかけて、一般公開が行われている。そして今年も2月20日(火)から3月3日(日)にかけて開かれるのが飯能ひな飾り展だ。これは町を挙げての行事で、この場所も会場の一つとなるそうだ。
(増子耕一、写真も)