トップ国内有用な自然と触れ合う教育 沖縄大学がオンラインなどでシンポ

有用な自然と触れ合う教育 沖縄大学がオンラインなどでシンポ

写真上は、盛口満教授(右)と教育プログラムの紹介で同教授が示した画像。写真下は野坂砂里奈代表(右)と上原周子教授(左)

沖縄県の沖縄大学はこのほど、第5回地域研究公開講座「こどもと自然―石垣島での研究・実践から―」と題したシンポジウムを対面・オンラインのハイブリッドで開催した。同大学こども文化学科の盛口満教授らが登壇し、自然を通した教育のあり方について議論を深めた。
(沖縄支局・川瀬裕也)

生活体験通した教育が重要 盛口氏

子供たちの良き成功体験に 野坂氏

離島の自然生かし実践 上原氏

子供たちが自然の中で遊ばなくなっているという。これは豊かな自然が多い沖縄でも近年問題視されており、同大学は、自然の中で子供を教育する方法について研究を進めてきた。

研究対象を、教育手段が制限され、学校教育以外で学びの場が少ない石垣島の子供たちに絞り、地理的に不利な教育環境をどのように補完できるかなどの研究を進めている。昨年は教育者を目指す同大学こども文化学科の学生と共に、交流事業を行った。

シンポジウムでは、初めに同大学の盛口教授が「こどもと自然白保の実践も含めて」と題して講演した。盛口氏は夜間中学の講師を担当した際、生徒の高齢女性たちの反応は、子供たちに教える時と反応が大きく違ったといい、「理科は最初に生活体験があり、それを理屈付けるものだ」と気付いたという。最近の子供たちはそもそもの生活体験が薄くなっているため、理科の授業を聞いても「へぇ~」と通り過ぎてしまうという。

沖縄の生き物について子供たちに尋ねてみたところ、「ヤンバルクイナ」や「イリオモテヤマネコ」「ハブ」などの名前を挙げるが、彼らの普段見たことがない動物ばかりで、逆に最近目にした生物を尋ねると、「犬」「猫」「ハト」「ゴキブリ」「草」だった。「これらの身近な生き物の話をすることが自然体験の入り口になるのではないか」と考えた盛口氏は、学校で自然と触れ合う機会を増やすため、ドングリを食べる授業や、動物の骨を加工する授業を取り入れた。

石垣島にある「白保サンゴ村」で、同学科の大学生と現地の小学生を交流させた企画を例に挙げ、「子供たちが自然と触れ合う機会を意図的につくり出していくことが大切だ」と強調した。

石垣島で、子供たちの自然教育に携わる一般社団法人「そらとかぜ」の野坂砂里奈代表は、石垣は自然環境が豊富だが、子供たちはあまり触れ合うことなく過ごしているのが現状だとして、「石垣の自然の美しさや、素晴らしさを通して、子供たちを教育していきたい」と活動の理由を語り、同島には大学が無いため、子供たちが大学生と関わりながら自然について学ぶことができる同大学の企画は意義深いと評価した。

同大学の上原周子教授は自身のゼミの学生らと石垣の「そらとかぜ」を訪れ行った交流会の報告をした。上原氏は、児童の「気付き」や、「やってみたい」を引き出すことを目標に、学生らとプランを練り、離島の自然を生かした教育実践をテーマに活動計画を策定。児童たちの主体性を引き出すことに力を入れたという。

野坂氏は、「学生たちが子供たちの目線に寄り添って交流プログラムを組んでくれたので、とても良い成功体験になった」と振り返り、「子供たち一人一人の貴重な思い出として、心に残っている」と感謝の言葉を語った。

参加者からは、「環境教育の現場や学童などに大学生が入ることで、子供と大人とのつなぎ役だけでなく、子供がより興味を持って楽しく活動できる場をつくり出せるのだと改めて感じました」といった声や、「子供たちにとっても、大学生にとっても、良いプログラムと感じました。彼ら、彼女らの10年後がどうなったのか、見てみたい」との感想が寄せられた。

かつて沖縄の人々は島ごとに異なる自然環境と深く関わり生活を送ってきたが、現代の都市化に伴い、子供たちと自然の断絶が進む。同大学の小学校教員を目指す学生たちが大学のない離島の子供たちと共に学ぶことで、自然をより身近に感じながら、お互いにとって新たな気付きがあったことが同シンポで確認された。今後の同大学のさらなる研究に注目が集まる。

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