
全国市区町村の庁舎内で、政党機関紙の勧誘(営業)、配達、集金が無許可で行われていることや、議員による職員へのパワハラ行為(心理的圧力など)により購読を勧誘していることなどが問題になっているが、昨年、35の地方議会で是正のため「自粛」や「実態調査」を求める陳情が採択されたことがこのほど、本紙の調べで明らかになった。(「しんぶん赤旗」問題取材班)
昨年の12月議会で「政党機関紙の庁舎内勧誘行為の自粛を求める」陳情が、埼玉県加須市(12日、本会議趣旨採択)、愛知県津島市(19日、本会議で委員会採択を報告)、豊明市(20日、本会議趣旨採択)、安城市(同日、本会議採択)、鹿児島県霧島市(22日、本会議採択)の5市で採択された。

陳情を巡っては、各所で陳情提出者と機関紙「しんぶん赤旗」の拡大を庁舎内で行う共産党議員との激しい論戦が行われたが、「庁舎内管理規定に基づいて適切に行われるべき」だといった各会派議員らの賛同が多く、採決で賛否同数となったものの委員長が賛成をして採択された津島市の例もあった。
今回、新たな動きとして注目されるのが、政党機関紙の庁舎内の勧誘・集金・購読の「調査」を求める陳情が「神奈川県民の会」(出井健三郎代表)から出されたことだ。9月議会で自粛を求める陳情が出された同県の逗子市と愛川町では、それぞれ不採択、陳情文の机上配布となった。
そこで同会は12月議会において「実態不明のまま問題を曖昧にするのではなく、まずは実態調査をして市民の不安を解消してほしい」と同2自治体に再提出。本会議で「調査を求める陳情」がそれぞれ採択された。愛川町では3人の共産党議員が反対したが、他すべての10人が賛成した。陳情採択を受けて、逗子市と愛川町は実態の調査に乗り出すことになった。
また、加須市で趣旨採択された陳情には、勧誘の際に「心理的な圧力を感じたという実態が本当にないかどうか職員に寄り添って調査・確認するよう行政に求めてほしい」との項目が盛り込まれている。趣旨採択は、採択と違って実行するか否かが執行部(行政)側に委ねられるため、陳情を提出した関係者らは「今後の市の対応を見ていきたい」と語っている。
昨年1年間で陳情採択は35。内訳は3月議会で15、6月議会で4、9月議会で9、12月議会で7。採択は13の都道県に広がっている。
◇勧誘で「圧力」3割 大磯町職員アンケート
政党機関紙の庁舎内での勧誘・集金・配達問題に関連し、本紙は神奈川県大磯町が昨年8月22日から28日にかけて行った職員アンケート(係長、主査級以上)の集計表を入手した。それによると、回答数は49・6%に当たる57人。町議会議員からの勧誘を受けたのが20人で、そのうち約3割の6人が勧誘の際、「圧力を感じた」としている。また、「課長、部長など職級が高くなるほど勧誘を受けた割合が高く」、「主に課長級以上の職員が勧誘の対象になっていると考えられる」と結論付けている。
職員アンケートは、神奈川県南足柄市、秋田県潟上市、北海道千歳市、兵庫県高砂市、長崎県長崎市、山口県山陽小野田市でも昨年実施されたが、市議から地位を利用するなどの「心理的圧力」を伴う勧誘を受けた実態が多数報告されている。
神奈川県大磯町が、令和5年8月22日から28日にかけて行った
「政党機関紙の勧誘に関する職員アンケート」の集計表

