震度6強の揺れを観測し、多くの住宅に甚大な被害の出た七尾市では、28カ所の避難所に1767人が避難している(15日午後6時現在)。避難所となっている市内一本杉町の御祓(みそぎ)地区コミュニティセンターには約130人が避難している。
訪ねてみると、避難者が滞在するホール内は、比較的暖かさが保たれている。同センターを管理している御祓地域づくり協議会の大谷内好子事務局長(66)によると、食事は民生委員が中心となって提供しているという。
避難から2週間が過ぎ、大谷内事務局長が最も心配しているのが、コロナ感染者が4人出ていることだ。「コロナに感染した人たちを2階のフロアに移し、隔離したいが、お年寄りで車いすの方もいる。エレベーターがないのでそれもできない」と頭を悩ます。
被災した大半の自治体同様、七尾市ではまだボランティアの受け入れ態勢ができていない。ただ炊き出しボランティアは既に活動を始めている。
大阪市西成区に本部を置くNPO法人大阪災害ボランティアは、御祓コミュニティセンターで、10日から16日までの1週間、1日3食を避難者に提供した。同ボランティアに加盟している大阪のタコ焼き店「あっちち本舗」もキッチンカーで七尾入りし、市民にタコ焼きを1日500食、無料提供した。総勢31人で七尾入りしたが、受け入れ先の負担にならないようにと、寝泊まりもワンボックスカーなど車中泊した。
避難所で提供した食事の献立は、日替わりで和洋中華とバラエティーに富んでいる。献立作りについて、同ボランティア参与の木村忠彦さんは「寒い時期なので、温かい食事をまず第一に考えました。それと高齢の方が多いので、高齢の人でも食べやすいメニューを考えました」という。大谷内事務局長は、「ボランティアの方に来ていただいて、本当に助かりました」と語る。
一方、自宅がなんとか住めそうで自宅に留(とど)まる人もいるが、そういう人たちには、支援物資が十分行き渡らない。そんな支援の網から漏れがちな自宅避難者のために、同地区松本町では、町内会長の高澤知明さん(69)が中心となってチームを結成し炊き出しを行っている。
「自宅にいる人には、高齢者も多い。そういう人たちは、支援物資を受け取りに行くことも簡単でないので、いろいろサポートが必要だ」と高澤さん。
食材は町内のお寿司(すし)屋さんはじめ市内の料理店などから提供を受け、飲食店スタッフが料理を担当した。5日から毎日行い、11日は「野菜たっぷりクリームサーモンご飯」などを提供。午前10時の開始とともに町内の人たちが列をつくった。
建設業者の全面協力で14日からは仮設風呂も開いた。断水が続く市内では、掛け湯を浴びれるだけでもありがたい。「これまで町内仲良くやってきた。それが今生きている」と高澤さんは言う。(能登半島地震取材班)