多様な自然と先人の知恵が育む 国立科学博物館で「和食~日本の自然、人々の知恵~」

素材生かす出汁文化など

成り立ちと特長、科学の切り口で

全国各地で栽培される大根の展示も関心を集めていた

東京・上野の国立科学博物館で特別展「和食~日本の自然、人々の知恵~」が開かれている。2013年に「和食;日本の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、関心が世界的に高まっている和食。その和食を和食たらしめているのは何かに科学の切り口で迫り、その成り立ちと全貌を紹介する。

素材の味や良さを生かすのが和食の特長と言われる。「列島が育む食材」でまずその食材の特長を見ていくが、前段としてそれを生み出す日本列島の自然の特長から語られる。和食は出汁(だし)や水を多用するが、日本の水は基本的に軟水。その軟水は出汁の成分が溶けやすいのが特徴だ。展示では、軟水がどのように生まれるのかを日本の地形や地質から説明する。

次に語られるのが、日本列島の多様な自然が生む食材の多様さだ。南北に長く伸びる日本は、北は流氷の覆うオホーツク海沿岸からサンゴ礁が発達する琉球列島まで、多様な水の環境に恵まれている。魚類だけ見ても4700種以上生息し、ニュージーランドの1300種と比べても遥かに多い。それら魚介類を風土に合わせて利用し、世界で最も多くの魚介類を活用する食文化をつくり上げてきたのだ。展示では日本で獲れる魚介類の模型や標本でその豊かさを紹介している。

多様なのは魚介類だけではない。煮物や漬物に欠かせないダイコンの種類も日本は世界一多く、800種以上が存在するという。生産効率が高く食味のいい「青首大根」が主流となっているが、最近は各地で在来品種の保存の動きも盛んになっている。会場には、桜島大根や聖護院(しょうごいん)大根など全国から25種の大根の模型が展示され、注目を集めていた。

和食ほど海藻を用いる食文化は例がない。日本沿岸に生育する1500種のうち60種を超える海藻が食用にされているという。昆布やワカメほか海藻の展示も興味深い。

昆布はいったん乾燥させたものから短時間でうま味成分を取り出す。生の肉や野菜を長時間煮込んで出汁をとるフランス料理や中国料理と異なり、素材の味を生かす和食に適しているのだ。

「和食の成り立ち」コーナーでは、和食の成立が歴史的に語られる。縄文時代から近代そして多様化する現代の和食までが紹介される。まず貝塚から発掘された貝殻や魚の骨で縄文人が何を食べていたのかを再現。次に弥生時代に入って稲作が本格化し「米と魚」という和食の根幹が出来上がる。

室町から戦国期に至って、和食の原型、本膳料理から懐石料理が生まれる。織田信長が徳川家康をもてなした本膳料理の豪華な再現模型も展示されている。江戸時代に入ると、屋台の模型などで、すしや天ぷらなどで和食が広がっていくさまが示される。

「多様化する和食」のコーナー最後には、全国の雑煮をモチの形などで5種類に分け「雑煮文化圏マップ」を示し、京都など10種類の雑煮の模型を展示。来館者は熱心に眺めていた。

会場は家族連れはじめ老若男女さまざまな層で賑(にぎ)わっていた。外国人の来場者も少なくなかった。内外を問わず和食への関心の高さを肌で感じさせられた。

同展は2月25日まで。その後、山形、宮城、長野、愛知、京都、熊本などの府県で巡回展示される。

(特別編集委員・藤橋進、写真も)

spot_img
Google Translate »