きらめく水晶や黄鉄鉱・ファンを魅了
水晶や黄鉄鉱など代表的で美しい鉱物の標本約500点を集めた企画展「大こうぶつ展」が秋田県立博物館(秋田市)で開かれている。同館が集めた世界中の鉱物を中心に、秋田大学鉱業博物館、阿仁郷土文化保存伝承館、小坂製錬などの協力を得た。
副題に「鉱物を楽しむ5つのメニュー」とあり、美しい結晶の世界や、形や色・化学組成の説明、そして日本でも有数の鉱山を擁した秋田県の産地をひもとく。後半では生産量が多い銅や亜鉛、鉄に加えバナジウムやアンチモンなどのレアメタル、最後にルビーやアクアマリン、メノウなどの宝石を紹介する。
会場の冒頭にあるのがマダガスカル産の天青石(てんせいせき)で、石の内部の空洞に青い結晶ができている。次がスペイン産の、陶土の中にできた大小さまざまな黄鉄鉱。
鉱物といっても、形や色、模様などが異なり非常に多様だ。六面体や八面体の結晶が代表的だが、球状もある。またハート形の水晶、「砂漠のバラ」(石膏(こう))、文字が二重に見える方解石、紫外線で光る「蛍光鉱物」も面白い。
大きくて美しい標本の産地は、マダガスカル、インドのデカン高原、ブラジル、スペイン、中国、アメリカなど。図鑑に載っている主要な鉱物の実物をそろえた。
秋田県の鉱脈型鉱床は小坂町の鉛山、鹿角市の尾去沢、湯沢市の院内、北秋田市の阿仁など主要鉱山だけで20、大小を含めると100を超える。尾去沢(おさりざわ)は鉱脈の数が1000本を超える大鉱床だ。一方、阿仁(あに)鉱山は一時期、銅の生産量が日本一だった。
秋田に鉱山が多い理由は、日本列島が大陸から切り離された後の約1500万年前は火山活動が非常に活発だったため。秋田県一帯は海底にあり、鉱脈がほぼ同時期にできた。
会場に黒鉱(くろこう)コーナーがある。黒鉱は金銀銅鉛などを含み、日本の高度成長を支えた。日本で産出した1億8千万㌧のうち秋田県が1億5千万㌧を占め、まさに鉱山は「たからのやま」だった。
後半に「都市鉱山」のコーナーがある。金の含有量は、高品位の金鉱床でも1㌧当たり40㌘だが、スマホやパソコンなどの電子基盤は400㌘と10倍も高い。だから、捨てないで再利用をと呼び掛けている。同展は来年4月7日まで。入場無料。
(伊藤志郎、写真も)