トランスジェンダー本刊行中止で
出版大手KADOKAWAが来年1月24日に発売予定だった書籍「トランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」の刊行を中止したことについて、著者の米女性ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアー氏は6日、X(旧ツイッター)で「活動家主導のキャンペーンに屈することで、検閲の力を助長する」と、KADOKAWAの対応を批判した。
刊行中止になったのは、シュライアー氏が2020年に米国で出版した「Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters(取り返しのつかないダメージ:娘たちを誘惑するトランスジェンダーの熱狂)」の邦訳版。LGBTの権利を過剰に擁護する社会風潮の中で性別違和を訴える若者が急増している実態や、性転換手術を受けて後悔する若者やその家族の苦悩などを描いたノンフィクションだ。
米国でベストセラーになり、10カ国語に翻訳されている。英エコノミスト誌や英タイムズ紙が年間ベストブックに選ぶなど、国際的にも高い評価を得ている。日本の一部でも、LGBT問題の正しい理解を促すために邦訳版出版を求める声が出ていた。
だが、KADOKAWAは5日、トランスジェンダーへの差別や偏見を助長するなどの意見が殺到したことを受け、刊行中止を発表。同社は「ジェンダーに関する欧米での事象等を通じて国内読者で議論を深めていくきっかけになればと刊行を予定しておりましたが、タイトルやキャッチコピーの内容により結果的に当事者の方を傷つけることとなり、誠に申し訳ございません」と謝罪した。
学芸ノンフィクション編集部よりお詫びとお知らせ | KADOKAWA
これに対し、シュライアー氏はXで、「われわれは日本から学ぶべきことが多いが、検閲的ないじめへの対抗策を教えることができる」と語った。米国でもLGBT活動家らから同書に抗議が殺到し、一部の大手量販店が販売を一時停止するなどの措置を取ったが、撤回されている。