「心は女」の男、女湯侵入事件の波紋 女性守る法整備の声高まる 「LGBT法」推進議員に批判

「心は女性」と自称する男による女湯侵入事件が波紋を広げている。こうした事件が起きる懸念は、今年6月のLGBT理解増進法の成立前から指摘され、同法反対の大きな理由でもあった。このため、同法を推進した自民党議員に批判が集まる一方、女性の安全を守るための法整備の必要性も浮上している。(編集委員・森田清策)

「実際に性自認女性を主張して公衆浴場の女湯に侵入した男性が逮捕された報道が出ているが、国民は今、捕まえられているから安心などとはまったく思っていない。LGBT理解増進法の成立や最高裁の判決などを見て、今後、違憲状態を解消していく上でこれからも逮捕できるのか、注意した側がかえって訴えられないか、と心配している」

参議院本会議で代表質問する 片 山 さ つ き 元 地 方 創 生 相 相=11月20日(参議院インタ ーネット中継動画より)

先月20日の参院本会議代表質問。自民党の片山さつき元地方創生相がこう訴えた。議場の一部議員からは「人権侵害だ」などのヤジが飛ぶ。しかし、片山氏はひるむことはなかった。

自らが共同代表を務める「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(自民党の保守系議員らで構成)が銭湯やトイレなどの女性スペースを守るための議員立法などを提言していることに触れた上で、さらに熱弁を続けた。

「日本全国の6400万人の女性たちの安心と安全、いわば究極生存権を一ミリたりとも危うくすることがないように、岸田首相の基本的な考えをうかがいたい」

参議院本会議で答弁する岸田文雄首 相=11月20日(参議院インタ ーネット中継動画より)

片山氏の質問に対して、岸田文雄首相は「多様性が尊重され、性的マイノリティーもマジョリティーも含めたすべての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向けしっかりと取り組む。理解増進の指針策定には多様な意見を聞いて検討を進める」と、一般論で応じた。

片山氏が指摘した事件は11月13日夜、三重県桑名市の温泉施設で起きた。愛知県春日井市の無職の男(43)が女湯に侵入。建造物侵入の疑いで現行犯逮捕された。男は受け付けで従業員から女性用ロッカーの鍵を受け取ったというから女装していたのだろう。しかし、女湯で身体を洗っていたところ、不審に思った他の利用客が従業員に相談し、従業員が110番した。男は女湯に入ったことを認めた上で「心は女性なのに、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか理解できない」と主張したという。

事件後、X(旧ツイッター)では「LGBT理解増進法を推した人たちってだれ」など、性自認を理由とする「不当な差別はあってはならない」と謳(うた)った同法の成立が事件を助長したとの趣旨の書き込みであふれた。

男が同法の影響を受けたかどうかなど、詳しいことは報じられていない。しかし、春日井市から桑名市までは車で約40分。これまでにも、利用しようと思えばできた温泉施設だ。同法成立後に、事件が起きたことは気になる。片山氏は「都内公衆浴場生衛にお聞きした所、LGBT理解推進法後、この手の件数増えたそうです」とXに書き込んでいる。

LGBT理解増進法を推進した議員の中でも、とりわけ批判の矢面に立つのは自民党の稲田朋美幹事長代理だ。Xには事件を「稲田事件」と呼び、「心は女性なのに」と主張した男を「稲田症候群」と揶揄(やゆ)する書き込みもある。

稲田氏の責任を問う声が高まるのは、理解増進法成立に中心的な役割を果たしたからだ。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前に同法案の国会提出問題が浮上した今年4月2日には、Xで「心が女性で身体が男性の人が女湯に入るということは起きません」と、懸念を打ち消す書き込みを行っていた。それが今、批判の根拠に使われている。

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