
各種世論調査で岸田政権の支持率が、就任以来最低を更新している。国民の4人に3人は岸田首相を支持していない中にあって、自民党内でもにわかに“ポスト岸田”を巡る動きが出始めている。「聞く力」を得意としていたはずの岸田首相の不人気の原因を探った。(政権検証取材班)
岸田政権の支持率低下に歯止めがかからない。
時事通信社が11月16日に発表した世論調査によると、内閣支持率21・3%。2012年に自民党が政権に復帰して以降、歴代内閣で最低の数字となった。岸田政権発足時の2021年10月調査から比べると、3分の2以下まで減少している。
さらに、自民の支持率が20%を切ったのは、2012年12月、民主党から政権を取り戻して以来、初めて。岸田政権に対する有権者の厳しい評価は、衆院選惨敗で野党に転落した麻生太郎政権の末期に近づきつつある。
このほか、先週末に朝日、読売、毎日の主要各紙が行った世論調査の支持率はいずれも20%台で、政権維持の「危険水域」に入る結果となった。これは「青木の法則」と呼ばれるもので、内閣支持率と自民党支持率を足した数字が50%を切ると、政権維持に行き詰まるとした青木幹雄元官房長官の説だ。菅義偉政権は1回も「青木の法則」に該当しないまま退陣に追い込まれた。時事通信の数字を見ると、岸田政権は「青木の法則」から既に約10%も割り込んでいる。
岸田政権と麻生政権を単純に比較できないが、麻生政権時は民主党という強い野党があった。政権批判票の受け皿ができていたことが、直後の衆院選で自民の惨敗、野党転落につながったのだ。
岸田政権がこれほど支持率で低迷する理由は何なのか。産経新聞の調査では、「実行力に期待できないから」が1年近く、4~5割と最多を占めていた。それが今年5月調査以来、「政策がよくないから」との回答が3割超で最多を占めるようになり、所得減税を打ち出した直後の11月調査では「政策がよくない」が最も多い40・4%を占めた。
安倍晋三元首相は政策を実行するに当たり、信念をもって国民を説得して議論していた。一方の岸田氏は首相になった理由を子供から問われると「日本の社会のなかで一番、権限の大きい人なので目指した」と答えた。「首相になりたいだけで、何をやりたいというのがない」というのが永田町での岸田氏の評判だ。人気欲しさに世論に迎合する姿勢が見透かされている。
それでも、目下、自民を脅かす強い野党が存在しない。岸田内閣の支持率が低下している中にあって、野党の支持率も同様に低迷している。11月の時事通信世論調査における自民党以外の支持率は、維新4・6%(前月比0・7ポイント増)、公明4・1%(同1・0ポイント増)、立憲民主2・7%(同0・4ポイント減)の順。それに、れいわ新選組の1・6%(同0・5ポイント増)、共産の1・1%と国民民主0・9%が続く。一方で、「支持政党なし」は62・5%(同1・4ポイント増)と高く、国民の政治不信を反映している。
支持率で維新、公明の後塵(こうじん)を拝する野党第1党・立民の泉健太代表は4日、大学で行った講演で「あと5年で政権交代を考えている」と述べ、次の総選挙では政権交代を目指さない考えを示した。現状、政権運営能力がないことを自白した形だ。共産などとの野党共闘も困難に直面している。
維新は政治資金収支報告書の不備やパワハラなど所属議員の不祥事も重なって伸び悩み、自民を脅かすまで至っていない。
宏池会(岸田派)出身の首相として、岸田氏の在任期間は、大平正芳氏や宮澤喜一氏を既に抜いている。24年2月には、鈴木善幸氏(864日)を抜けば宏池会創設者の池田勇人氏に次ぐ長さとなる。支持率が下がり続け、「年内解散総選挙に踏み切れないまま、総理の椅子にしがみついている」という一部政治評論家の指摘に説得力が増しつつある。