県は防衛局に懸念表明

陸・海・空の自衛隊による最大規模の訓練「自衛隊統合演習(JX)」が10日から20日までの日程で、全国各地で行われた。沖縄では、航空自衛隊那覇基地で滑走路の復旧訓練と、負傷者を輸送する衛生訓練の様子が報道陣に公開された。一方では、陸上自衛隊の機動戦闘車が公道を走行したことなどについて、玉城デニー知事を支えるオール沖縄勢力らは反発を強めているが、緊迫する南西諸島での安全保障環境において、統合運用能力の強化は急務だ。(沖縄支局・川瀬裕也、写真も)
滑走路復旧と負傷者輸送を実動訓練
災害含め、あらゆる被害想定
JXは陸・海・空自衛隊の「統合運用能力の維持・向上」を目的とし、概ね毎年行われているもので、今年は自衛隊員約3万人、車両3500両、艦艇20隻、航空機210機が動員され、米軍約1万人もオブザーバーとして参加した。
那覇市の空自那覇基地では15日、ミサイルやロケット弾などによる武力攻撃や自然災害などで滑走路が使用できなくなった事態を想定し、早急に復旧する訓練が行われた。

同訓練には陸自第15旅団・第15施設隊(那覇駐屯地)と、第5施設団・第103特殊機材中隊(福岡・小郡駐屯地)、空自南西航空方面隊・南西航空施設隊(那覇基地)から約90人の隊員が参加。
訓練が始まると、破損個所がカッターで四角く区切られ、内部のコンクリートを大型重機が次々と撤去していく。きれいに掘り下げられた後、砂利を敷き、速乾性のコンクリートが流し込まれた。開始から2時間ほどで滑走路は元通りの平らな状態に復旧された。
これについて一部地元メディアは、「攻撃を受ける前提の訓練だ」とする声を拾い、批判的に取り上げている。しかし、離島が集中する南西諸島において、航空戦力に基づく制空権の確保・維持は最重要事項となる。そのような中で、陸・空自衛隊が統合し、滑走路を復旧する訓練の初公開が持つ意味は大きい。
防衛省統合幕僚監部の渡部智副報道官は訓練後、「あらゆる事態等において被害を受けた想定だ」として、攻撃による被害のみに限らないと強調した。
19日には、任務により負傷した隊員を県外の医療施設へ輸送する訓練が実施され、陸・海・空の隊員約50人が参加した。
自衛隊病院の医療資源枯渇や病床の逼迫(ひっぱく)を避けるための訓練で、隊員たちは、患者役の隊員を輸送機に運び込み、那覇空港を離陸するまでの一連の流れを確認した。
那覇基地では、病院から滑走路まで一定の距離があることから、滑走路付近の格納庫を一時待機所として設定し、輸送前の準備や看病を行った。しかし、この概念はまだ自衛隊には根付いておらず、米軍のモデルを採用した初の試みとなった。訓練開始から約2時間後、“負傷隊員”を乗せたC2輸送機は埼玉県・入間基地へと飛び立った。
演習に先立ち県は9日、沖縄防衛局に「(公道や港湾などを使用した)大規模な演習の実施は、県民にさまざまな不安を与える」として懸念を伝え、県民生活への影響を最小限にすることを求めた。だが、台湾有事が現実味を増す中で、県民をどう守り避難させるかが先決の課題であり、訓練への懸念表明は、却って県民の生活に不安な影を落としている。
米海兵隊が組織改編
中国念頭に離島作戦強化
沖縄を拠点に活動する米海兵隊は15日、組織の一部を改編し、離島作戦に特化した「海兵沿岸連隊(MLR)」を発足させた。
改編されたのは、キャンプ・ハンセン(金武町)所属の第3海兵師団司令部と第12海兵連隊で、同日、基地内で記念式典が行われた。
MLRは対艦ミサイル部隊などを含む砲兵連隊で、敵の射程圏内にある離島を中心に部隊を分散展開し、対艦攻撃や偵察などを担う。
台湾侵攻を目論み、東シナ海での活動を強める中国を念頭に置いた戦略見直しの一環で、当初の予定より2年前倒しでの改編となった。
式典で、第3海兵師団司令官のクリスチャン・ワートマン少将は、「改編は戦略的な進化だ」とし、自衛隊との統合運用を強化していきたいとあいさつした。ピーター・エルトリングハム第12海兵沿岸連隊司令官は、「第一列島線にいることを誇りに思う」と語り、「不測の事態に対応することのできる部隊だ」と強調した。
同部隊の規模は約2000人になる見通しだ。






