【特報】表面化しにくい性的虐待 被害者、心の傷に長期苦しむ

LGBT支援につながる課題

全国の児童相談所(児相)への虐待相談件数がまた過去最高を記録した。政府は児童福祉司などを増員して対応するが、虐待増加に追いつかない。中でも性的虐待は心の傷(トラウマ)が深刻でありながら表に出にくいため、支援を受けられず長く苦しむ被害者が少なくない。性的虐待を中心に、被害者支援について考えた。(森田清策)

「性的虐待の被害者の中には、性自認が逆転してしまう方がいる」

先月、東京都内の喫茶店で話を聞いた児童虐待の被害者Aさん(女性)はこう語ってため息をついた。何度も死を意識し、自殺を図ったこともあるという。冒頭の話は、Aさんが知っているケースについてだ。

児相が昨年度に虐待相談で対応した件数は21万9170件(前年度比1万1510件増)に達し(こども家庭庁発表速報値)、相談件数の集計が開始された1990年度以来、32年連続で過去最高となった。児童虐待防止法が施行されたのは2000年。しかし、一向に歯止めがかからない状況はグラフを見れば一目瞭然だ。

同法は、虐待の定義を身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)、心理的虐待の四つに分類する。昨年度の相談内訳は①心理的虐待12万9484件(59・1%)②身体的虐待5万1679件(23・6%)③ネグレクト3万5556件(16・2%)④性的虐待2451件(1・1%)。いずれも前年度より増えているが、性的虐待はわずかに増えただけで、過去数年は横ばい状態。しかし、それを実態と見るのは早計だろう。

現在、メディアで大騒動となっているジャニー喜多川氏による未成年者への「性加害」。1960年代から続いてきたと言われながら、最近まで隠蔽(いんぺい)されてきたことでも分かるように性犯罪被害を受けても訴え出ない人が多い。家庭内での虐待はさらに表に出にくい。こうした背景を考慮すれば、相談件数は氷山の一角であることは間違いなく、被害はかなり広がっていると見るべきだ。

さらに深刻なのは、性的虐待による心の傷の深さだ。性的虐待は父親から娘だけでなく、母親から息子への虐待ケースもある。しかも、それが愛情の表現だと思い込んでいる場合もある。思春期になって、その本当の意味を知った時のショックは想像を絶するものがある。

性的虐待の被害による心の傷は摂食障害、自傷行為、性的逸脱行動などの症状を示す。山梨県立大学の西澤哲教授(臨床心理士)は、その著書『子ども虐待』で次のように述べている。

「性的虐待を受けた子どものなかには、自分が女性であるためにそうした被害を受けたと考え、女性であることに拒否感を抱く女の子もいる。そして、そういった子どもが女性であることを否認することがある」

さらには「彼女たちは自分のことを『ぼく』と呼び、ヘアスタイルや服装などをボーイッシュにして、まるで男の子であるかのようにふるまう」と、冒頭のAさんの発言につながる指摘を行っている。

筆者も性的少数者(LGBT)問題を取材し、性的虐待被害者と言っていい当事者に会ったことがある。性的少数者と性的虐待を短絡的に結び付けるのは間違いだが、性的虐待が当事者を増やしている可能性は否定できない。心の傷をどう癒やすのか、という視点から見ると、両者の間には共通する支援課題があるとも言えよう。

児童虐待は、たとえ心理的虐待でも被害者の脳の働きを低下させるとともに、早期に適切なケアを行わないと、被害者はうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患で苦しむ。中でも性的虐待は「複雑性PTSD」という、より複雑で重篤な疾患を抱えるケースが多いことが分かっている。それは長期間続くこともある。さらには、加害者が、実は虐待の被害者だったというケースも少なくない。つまり、虐待は放置すれば〝連鎖〟する危険があるのだ。

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