【連載】衆参補選現場を行く(下)衆院長崎4区 保守分裂のすき狙う立民

演説を聞く参加者ら =15日午後、長崎県佐世保市

【連載】衆参補選現場を行く(上)参院徳島・高知選挙区 自公の一致強調も苦戦

「横一線、厳しい戦い。この佐世保、(長崎)県北に与党の国会議員がいません。地域の声を届ける代議士が必要なんです」

選挙戦中盤の17日、自民公認の金子容三氏は佐世保市で行われた演説会でこう訴えた。

15日には、同党総裁の岸田首相が佐世保に入り、マイクを握った。直前に北村氏の墓参りをしてきたという岸田首相は「悲しみを乗り越え、未来を誰に託すのかを決めるのが今回の選挙」と語り、“弔い合戦”を強調した。衆院長崎4区の補選は、自民党の元地方創生相の北村誠吾氏の死去に伴い行われる。北村氏が所属していたのは岸田派(宏池会)。岸田派からは国会議員はもちろんのこと、秘書も入れ替わりで選挙区に入り、総力戦を展開している。

金子氏の父親は、元長崎県知事の金子原二郎氏。祖父の岩三氏も農林水産相を務めた。金子氏は、いわゆる地盤・看板(肩書)・カバン(お金)の「三バン」を持つ恵まれた環境にある一方で、世襲政治に対する有権者の風当たりは強い。

それ以上に、県内の保守分裂が足かせになっている。北村氏が生前、後継指名した地元県議が、金子候補との公認争いで敗れた。それ以前に、北村氏は、金子氏の父で前参院議員の原二郎元農相が同じ岸田派に属しながら長崎で覇権争いをするなど、両者の間で確執があった。

2区の有権者の約7割を占める大票田の佐世保市で、北村氏の支持層が金子氏支援でまとまるかどうかがカギになる。頼みの公明については、金子氏推薦を決めたのは告示日直前の9日だった。関係者は「異例の遅さで自公協力の出鼻がくじかれた」と嘆いた。

こうした要素を差し引いても、40歳という若さと行動力というアピールポイントがある。証券会社時代に、米国でMBAを取得。アメリカの人材育成に学びながら、ベンチャーの育成と日本の教育改革を訴えている。

対する立憲民主党公認の末次精一氏には、社民党が推薦するほか、共産党が自主的に支援し、国民民主党の地元支部も支援。形の上では野党統一候補となった。

末次氏は、2021年の衆院選は立憲民主党公認で出馬、北村氏を約400票差にまで追い詰め、比例復活している。衆院選5回目の挑戦でようやく議席をつかんだ苦労人だ。その間、長崎県議を2期務めた。政治を志したきっかけは、30代の頃、小沢一郎衆院議員の秘書を務めたことにある。

長崎4区は、2019年の民主党への政権交代を除けば、自民が議席を得てきた。保守地盤で行われる弔い選挙という相手有利の情勢の中、「現職の自分が出なければ有権者の選択の機会を奪う」と出馬を決心した。

4月の衆参補選で立民は5選挙区で一人も当選させられない惨敗を喫した。崖っぷちに立たされている泉健太代表は告示前日から佐世保入りし、車で精力的に回ってアピール。告示日の10日には「岩盤のように強い自民党政治を覆して、2世、3世ばかりではない政治をつくろう」と呼び掛けた。

末次氏の演説も大半を岸田政権批判に割いた。人口減少で地域が疲弊し、何十年も賃金が上がらないと批判した上で「これが自民党(政治)の結果。政治を変えなければならない」と訴えた。経済対策では、中小企業の育成を強調するものの、財源の根拠を示し切れず、「アピールが弱い印象は拭えない」(地元有権者)。(衆参補選取材班)

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