異論を言っただけで排除
民商新人職員に「洗脳」合宿
4月9日の兵庫県議会議員選挙(神戸市灘区選挙区)に日本共産党公認候補で出馬した東郷ゆう子さんは、党などを相手取る民事訴訟を起こし8月25日付で除籍処分となった。2020年8月に共産党に入党、4カ月後の12月に同県灘民主商工会(民商)の事務局員となり、今年の統一地方選挙では県議選候補に擁立された。東郷さんに落選後の民商解雇の経緯や不正疑惑、共産党の現状などについて聞いた。 (聞き手・豊田 剛、写真も)

――どういう経緯で共産党公認の兵庫県議候補になったのか。
今年1月から民商を休職し、選挙に向けて、党での活動をメインにするようにと上司から指示された。選挙期間中の給与補償や落選した際には民商に戻れることを確認したかったが、口約束だけであいまいにされた。主人から契約書をもらうよう言われたが、もらえなかった。
――選挙の結果、落選した。なぜその後、職場復帰できなかったのか。
落選が決まり、3日休んだ後、事務局長に連絡すると「もうちょっとゆっくり休んで」と言われた。25日に「活動費(給与に相当)を渡すから」と言われて事務所に行くと「ぼくらは辞めさせたくないけど、(灘民商)三役(会長、副会長、幹事)は何と言うだろうか」と、事実上の解雇通告をされた。
4月26日、私に内緒で主人が灘民商に呼ばれた。民商会長、事務局長、次長、事務局員4人に囲まれ、選挙活動が不十分、預り金保管の不備で損害を出した、欠勤・早退が多いなどと、私を辞めさせるためのでっちあげの理由を並べられた。これまで一度も減給処分も注意もなく過ごしていただけに、主人はおかしいと思ったし、何一つ証拠がなかった。私は神に誓って不正をしていない。
結局、5月9日付で解雇通知を受けた。共産党からは5月15日までに党員としての権利制限処分を受けたため、何も発信できなくなった。
――灘民商の不正疑惑はどうやって気付いたのか。
これまでやってきた仕事の内容を主人と話す中で、不正があることに気付いた。新型コロナウイルス感染の持続化給付金の書類不備を補い、補償させることが主な仕事としていたが、事務局長が内容虚偽の書類を作成していた。家賃サポート緊急一時金でも同様の手口で書類作成していた。
弁護士を雇うかどうか相談する中で、(自分が作成したわけでなくても)「罪に問われることになるかもしれない」と覚悟を問われたが、不正を明らかにするためには闘う決意だ。
――二つの訴訟を提起している。
6月30日、不当解雇を争うため、灘民商に対して労働審判を神戸地裁に起こした。同日、権利制限処分無効訴訟を日本共産党中央委員会、日共県委員会、東灘・灘・中央地区委員会、味口俊之神戸市議に対して提訴したが、8月29日に除籍処分されたことを受け、9月12日の初公判で除籍処分無効確認に変更した。次回口頭弁論は11月21日に行われる。
――党員や民商職員になるに当たり、何か特筆すべき経験はあるか。
昨年12月、民商の新人職員を対象にした研修会があった。事務局長いわく「洗脳会」だ。過去は1週間あったというが、私の場合は3日間で、朝から晩まで民商や共産党、その連携について勉強した。10人グループのうち、3~4人は給付金支援の仕事をしていたというから、知らず知らずのうちに不正受給に関与していた人は少なからずいるのではないか。
――共産党に対して思うことは。
今は保身がすごい。市議らの言動から、自己満足で終わり、本気で社会を改革しようとしていないことは明らか。コロナ禍になって特に、人々を〝洗脳〟しきれていないと焦っているのではないか。昨年10月頃から、党員を増やす目的で地域の集いを定期的に開催するよう通知があった。その時は、ベテラン党員らからいろんなエピソードを聞きたいと思っていたが、味口市議が自分の話ばかりして、それから二度と開かれることはなかった。