「接点」批判から解散請求へ 旧統一教会

家庭連合に対する宗教法人法に基づく流れ
家庭連合に対する宗教法人法に基づく流れ

宗教審に近く諮問 文科省方針

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に、質問権を行使して調査を進めてきた文部科学省は、宗教法人法に基づき、教団の解散命令を東京地裁に請求する方針を固めた。政府関係者への取材で9月30日、分かった。10月12日にも宗教法人審議会に諮問し、決定する。

教団の問題は安倍晋三元首相の銃撃事件に端を発して改めて顕在化し、親が信者の「宗教2世」や献金当事者らが解散を求めていた。

宗教法人法は第81条で、「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」などがあれば、裁判所は所轄庁や利害関係者、検察官の請求で解散を命じることができると定めている。1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件を機に同法が改正され、要件に該当する疑いがある場合に行使できる「報告徴収・質問権」が創設された。

文科省は昨年11月、不法行為などを認めた民事判決が計22件、賠償額が少なくとも計約14億円に上るとして、初めて質問権を行使した。これまで計7回にわたり、組織運営や献金、海外送受金、裁判や示談など500以上の項目について資料や報告の提出を求めた。これと並行して、高額献金当事者や全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)などからも聞き取りを行っていた。

質問権を巡っては、約2割に当たる100項目以上で回答を拒否したとして、文科省は9月、過料を科すよう地裁に通知している。

選挙前に“手切れ証文”か

解説

政府は12日にも世界平和統一家庭連合の解散命令請求を行う方針と報じられたが、岸田文雄首相は先月13日の内閣再改造後の記者会見で「最終的に判断をする」と強調。「宗教法人審議会の意見も伺いながら、法に基づき」判断するとの建前を語ったものの、同30日には「解散請求」されるとNHKはじめ大手メディアが報じるなど結論ありきの印象は拭えない。

今月5日には衆参補欠選挙が告示され22日に投開票が行われる。また20日には臨時国会が召集される予定で、深秋の衆院解散総選挙の可能性も浮上している。昨年7月の安倍元首相銃撃事件で教団や反共産主義を掲げる関連団体との「接点」批判が過熱したことから、自民党は調査報告を発表し教団・関連団体との「断絶宣言」を行った。

背景には同年8月の内閣改造でも支持率が下降したことが考えられる。教団との“手切れ証文”を迫られる形で、もともと反自民の傾向が強く、旧社会党や共産党とも関係の深い全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)と協力し、次期国政選挙で“みそぎ効果”を得るため教団への解散請求を前のめりに進めたといえよう。

その結果、従来文部科学省が教団を「解散命令請求の対象ではない」としてきた宗教法人法の解釈について、首相は国会答弁で一晩で変更、捜査ではない質問権についても文化庁宗務課のスタッフを他庁からの出向で約5倍にして7回行うなど、宗教に対する政治権力を一方的に拡大させた。今後、民事訴訟を抱える他の宗教団体に何らかの影響が波及するなど懸念される。

一方、教団側は被害者や元信者の苦しみを生んだことへの対処が後手に回ったと言える。昨年、改革推進本部を立ち上げ記者会見を行うなどしたが、結果として世論の理解を得られていない。

東京地裁に解散命令が請求されれば、所轄官庁の文科省と教団の言い分を聞いて判断がなされる。地裁で確定すれば約半年、控訴・上告されて最高裁で確定するまでには約3年かかるとみられる。

解散が確定した場合、宗教法人の代表役員、責任役員は退任し、裁判所が選任した清算人が宗教法人法の手続きに則(のっと)り法人の資産財産をもとに債権債務の清算に入る。清算の過程で破産手続きに入る場合と、資産財産が余って残余財産処分が行われる場合がある。(窪田伸雄)

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