
AI愛護団体と人工知能美学芸術研究会が主催する「AI芸術の先駆と拡張~自動ピアノ・四部音・生成AI~」と題する展覧会・コンサートが2日、東京・上野の旧東京音楽学校奏楽堂で開かれた。
歴史ある空間に、アンティーク感あふれる自動ピアノが奏でる音色が響く。鍵盤の動きがはっきり見えるため、まるで透明人間が演奏しているような不思議な光景だった。
使用されたのは、1920年代、米国で生産されたロール式の自動ピアノ。紙製のロールに穴がたくさん開いていて、そこから空気を吸い込み、その鍵盤を動かして音を鳴らす。前半演奏された曲は、アメリカ生まれのメキシコ人作曲家コンロン・ナンカロウの「自動ピアノための習作」。指が20~30本あっても演奏不可能な曲で、正確な時間やテンポの打鍵が要求される。
後半は、自動ピアノと人間が演奏する四分音ピアノ(4分の1音下げて調律したピアノ)の共演だった。中でも、新作の2曲は、主催団体を率いる美術家の中ザワヒデキさんと草刈ミカさんが音楽生成AI「MusicGen」を使用して作曲した。四部音ピアノは大瀧拓哉さんが演奏した。難解な曲を自動ピアノに合わせて演奏した大瀧さんには大きいな拍手が送られた。中ザワさんと草刈さんが知る限りでは、自動ピアノと四分音ピアノの共演は世界初という。
途中のトークセッションでは、ナンカロウの楽曲の演奏について中ザワさんが「自動ピアノは毎回違ったものになる」と話した。楽器も生き物のようなもので、環境に影響され、演奏するたびに音色が違ってくるそうだ。(豊田剛、写真も)