岸田文雄首相が13日、自民党役員人事と内閣改造を行い、第2次岸田再改造内閣を発足させた。「変化を力にする内閣」と命名された新内閣の課題を探った。
今回の党・内閣人事はさまざまな狙いがある。まず、「骨格」を残しつつ、派閥均衡に配慮して政権基盤を固めた。その一方で、党では小渕優子氏を女性初の選対委員長に、内閣でも外相に上川陽子元法相、こども政策担当相に当選3回の加藤鮎子氏を抜擢(ばってき)するなど、女性を過去最多に並ぶ5人起用し、新入閣も11人で「刷新感」を打ち出し、保守派から親中派との批判を受ける林芳正外相や週刊誌などでスキャンダルが指摘された木原誠二官房副長官を閥務や党務に移動させて、支持率の回復を狙った。
さらに、来年秋の総裁選に色気を見せる茂木敏充幹事長、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相、西村康稔経済産業相を取り込んで(再任させて)、政権が揺らいだ時に絶対的な「対抗馬」となる芽を摘んだ。とりわけ最大のライバルとなり得る茂木敏充幹事長には、再任に当たって同じ派閥の小渕氏を選対委員長に据えて牽制(けんせい)する細心さを見せた。
このような狙いは全て来年秋の総裁選での再選に向けた布石といえる。そのためには、よく練られた人事だと言えるが、残念ながらこの内閣で何をしたいのかが見えてこない。
首相は経済、社会、外交・安全保障の三つを政策の柱として取り組むことを表明した。経済ではまずは物価高に対応し、国民生活を応援する大胆な経済政策の実行を掲げ、社会では「次元の異なる少子化対策」の早期実施に向けた制度改革、外交・安全保障では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化や防衛力の抜本的強化を強調した。
喫緊の課題は経済だ。首相の再選戦略で次の焦点となる衆院解散や臨時国会の開催について首相は13日の会見で、「まず思い切った経済対策をつくり、早急に実行することを最優先に日程を検討する」とだけ述べた。内閣支持率の低空飛行は続いており、ガソリン価格をはじめとする物価高が国民を苦しめる現状では、解散はとても無理だ。
それで、「国民生活を応援する大胆な経済政策」の実行が前提となるが、首相は10月中をめどに政策の取りまとめを目指す意向。臨時国会でそれを裏付ける補正予算まで成立させるとなると、解散は早くても11月以降になる。それも、支持率の回復が前提だ。
一方、首相が「今年の大きな挑戦」と呼ぶ少子化対策は今年6月「こども未来戦略方針」を策定し、必要な制度改革の法案は来年の通常国会に提出する方針。また、防衛力強化も昨年末に安保関連3文書を改定して防衛費を今年度から5年間で総額43兆円にすることを閣議決定している。
だが、いずれも急ピッチで方向性だけは定めたものの、財源問題などが残っており、年末にかけて議論が再燃する見通しだ。これらの課題にしっかりと結論を出すことが先決のはずだ。
首相が13日の会見で、「しっかりとした結論を出す」と表明したのが旧統一教会問題だけなのは、いかにも残念だ。(武田滋樹)